ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

人間なかなか変わらない[2023年1月8日(日)晴れ]

誕生日。朝起きると家族や友人の何人かからメッセージが届いている。29歳から30歳になる時はそれなりに感慨深かったものだけど、30歳から31歳は驚くほどなんとも思わない。そのためメッセージの返信も紋切り型になってしまう。特別感が持てないのに特別っぽくしなければいけない時ほどつらいことはないので、特にSNSとかには書かず(去年は書いたけど)黙っていようと思う。

私はクリスマス、正月、誕生日がおよそ1週間おきにやってくるので、年末年始はかなりイベントフルになる。しかも今の恋人は12月末が誕生日。何年か前まではそれを楽しいと思っていたが、今はただ「渋滞しているな」と思う。あと誕生日って「素敵な1年を過ごしてね!」と言われるので何か返答を考えなければならないけど、それ1週間前の正月にやってるし……。

 

今日は仕事はしない予定だったので、午前中はゆっくり過ごした。お昼は昨日、母親が誕生日祝いにと送ってくれた富山の鱒寿司。恋人と二人で1ホール(というのだろうか)食べる。2ホール送ってくれていて、もう一つは昨晩食べた。恋人は「一生分の鱒寿司を食べた」と言っていた。

日中は佐々木敦と児玉美月が恋愛映画について語り合う対談本『反=恋愛映画論』を読んでいく。一つ一つの作品の読み解きもそうだけど、児玉さんがある映画が話題に上がった時に別の映画に接続して語る情報量の多さに圧倒される。あとこれは二人ともだけど複雑なものを複雑なまま語る語彙がかなり豊かで、その豊かさがそのまま解像度の高さに通じている。監督、脚本、テーマ、俳優の演技、時代性といった複数のパラメータが関わってくるし、登場人物の行動にも功罪両面があって白黒はっきりつけられない。ともすれば「色々あるよね」と散漫になってしまうところを、ちゃんと一本の筋を通して自分の視点から映画を見ているのがわかってものすごく刺激的。2章まで読んで、観た映画は目次に名前が出ている作品のうち半分くらいなのだけど、他の作品も観たくなった。特に『本気のしるし』は友人も激推ししていたし、観ておかなければ。

児玉美月さんは先日観た『そばかす』のパンフレットにも寄稿していて、それもすごくよかった。今一番尊敬している書き手のお一人。

 

恋人がジムへ行くというので私も出かけることに。今日はサウナに行きたかった、というか外気浴がしたかったのでアクア東中野へ。この銭湯は小さな屋外プールが併設されていて、泳ぐのは難しいけど大きい水風呂みたいな感じで解放感があって気持ちいい。夏場は水風呂よりは水温が高いが、今は同じくらいかもしれない。サウナ→屋外プール→プールサイドで外気浴、を3セットほど繰り返す。すっきりした。

電車に乗って帰宅。その最中、久しぶりにTBSラジオ荻上チキ・Session』をタイムフリーで聞く。岸田総理の年頭記者会見。少子化対策のところで「子ども家庭庁が4月に発足する」と言っており、あー、、という気持ちになる。結局この名前のままなのか。
当初の案では「子ども庁」だったのが自民党保守系議員の「子どもは家庭でお母さんが育てるもの」といった意見を受けて「子ども家庭庁」になったとされており、旧統一教会の関与も疑われている。政府は影響を否定しているけど、どちらにしても旧態然とした家族観を強めてしまう嫌なネーミングであることに変わりはない。親からの信仰の強制によって苦しむ宗教二世の方がいる中で、子どもと家庭をわざわざ結びつけなくてよいのでは。苦しんでいる宗教二世に限らずたとえば虐待サバイバーの人にとっても受け入れにくい名称だと思う。結局、周縁化された人を取りこぼさないようにしようという意識がないのだと感じる。子ども家庭庁という名前に限らず、政治のいたるところでその態度を感じ取ってしまう。

 

話は変わるけど、23年に発足するものといえばインボイス制度もある……。先日今年初めての出社をしたら、定例ミーティングでインボイス制度についての簡単な説明があったのだった。その流れで「どうするの?」と聞かれ、「ちょっと登録しないで様子見たいんですよね。嫌なので」と返す。まあ「嫌なので」で免れられるものでもないのだけど……これ、みんなどう考えているんだろう? 制度自体には引き続き反対だけど、そろそろ導入開始したあとの行動も現実的に考える必要がある段階なのでは。色々な人に話を聞きたい。

 

18時半から地元のビストロで恋人と誕生日のお祝い。今月は仕事が暇なわりに人と遊ぶ予定がたくさん入っていて、これでいいのかなーと思う、というようなことを話す。この日記でも何度も何度も書いているけど、私は仕事がない状況に対していつも必要以上に不安になってしまう。もっと「生きていけるならいいじゃん」「暇でラッキー、今は目先の仕事以外に時間を使おう」と思えるようになりたい。というか、そうならないと安定してお金を稼いでいるうちに人生が終わる気がする。そしてそんな人生を回避するには、暇でちょっと収入が少ない状況に身を置くのが手っ取り早い。……まったく同じことをフリーランスになってから何度も考えている。この結論にたどり着くのも今回が初めてではない。人間なかなかすぐに変われるものではないな。とりあえず一月は遊びまくろう。そのうち何かが変わるだろう。

 

店を出る時までずっと親切な接客をしてくれるお店だった。赤ワインを2杯飲んだだけなのに酔っている。帰りにヴィレッジヴァンガードに寄り、グミを買った。だいぶ前に流行っていた「地球グミ」をはじめて見たのでそれと、「レインボーグミ」という韓国のグミ。「レインボーグミ」はパッケージにユニコーンと虹が描かれていて、(クィアじゃん)と思ったので。恋人が「誕生日だし買ってあげようか」と言ってくれたが普通に自分で買う。

 

帰宅してさっそく地球グミを食べてみる。弾力があると聞いていたが、グミっていうよりむちむちとしたマシュマロに近い食感。味も甘ったるい。私はとにかく固くて酸っぱいグミが好きなので、ちょっと期待はずれだった。自分で買ってよかった。

『反=恋愛映画論』を読み進めたかったが、酔っぱらっていて文字が追えず。ワインは気持ちよく酔える時とそうでない時の差が激しい。水をたくさん飲んで寝る。