ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

海岸入口[2023年7月18日(火)晴れ]

昨晩タックスノットで飲んだビールが残っていて、朝はなかなか起きられなかった。シャワーを浴びて、午前中のうちに、新しく作っている日記ZINE*1を、主にデザインやデータの面で最終調整。昨日の昼、Mと会ってアドバイスしてもらった通りに修正し、入稿する。慣れていないこともあって、入稿の後戻りできない感にドキドキする。少し経って「データに問題はありませんでした」と連絡がきて少しほっとする。しかしデータに問題がないことは内容に問題がないことを意味しないし(誤植とか)、私と印刷所側で認識の齟齬がある可能性もなくはないので引き続きドキドキしたまま。良い感じになりますように。とりあえず昨日の日記を長く書く。

 

12時から定例のオンラインミーティング。終わったらすぐに家を出て、取材のため湘南台へ。新宿まで出て、小田急線で1時間ほど。座れたので、最近三鷹UNITEの大森さん、書店員のげじまさんとはじめたポッドキャスト番組「前世はきょうだい」の明日配信回をチェックし、概要を埋める。来週また収録があるけど、今回はおすすめ本として何を紹介しようか。

15時から40分ほど取材。まっすぐ帰ってもよかったのだけど、せっかくここまで来たんだしと思って、突発的に近くに海がないかを調べはじめる。最近、この媒体は交通費が支給されなくなった。その溜飲を下げる(?)ためにも、とんぼ帰りではなく少し遊びたかった。

湘南台から海までは思いのほか遠く、徒歩では難しそう。大人しく電車で片瀬江ノ島へ。前に来たのがいつだったかもう覚えていないが、何度か来たことがある。懐かしかった。竜宮城を模したようなよくわからない駅舎も変わっていない。

駅を出てすぐのところにあるファミマでアイスコーヒーを買う。ボタンを留めずにシャツを羽織った水着姿の青年二人が缶チューハイを選んでいた。人の流れがあるほう、おそらく海があるほうへコーヒーを飲みながらぶらぶらと歩く。たいていみんな肌を大きく露出していて、濃いグレーのポロシャツに黒のスラックスみたいな服装をしているのは私くらいだ。浮きまくっているが、でもいい。というか、誰も私のことなど見ていなかった。人生に疲れたおっさんがいるなーくらいには思われたかもしれないが、それも間違いではなかった。

 

海へ行くには地下道を通る必要がある。スロープを下って薄暗い地下道の交差点に行き着くと、「海岸入口」と書かれた案内板が壁に貼り付けられている。海岸入口。いい響き。なんてことないのに慰められるよう。スロープを上って浜へと向かう。薄暗い地下道から再び太陽の下へ。

連休明けの浜には海の家がひしめき、若者たちがはしゃいでいた。サンダルがあればよかったけど持っていないので、黒いスニーカーで砂浜を歩いて行き、波打ち際に近づく。写真や動画を何枚か撮る。

寄せては返す波の動きがきれいだが、近づきすぎると海水は茶色く、ちょっとオイルっぽいというか、率直に言ってあまりきれいではない。肉眼で見ると動きのきれいさや雰囲気のよさが上回るのだが、フォーカスして撮ると伝わらないなと思った。iPhoneをしまって引き返し、浜と道路をつなぐ階段に腰かける。アイスコーヒーを飲み干してしまって、もう一つ大きなサイズを買えばよかったと思いながら音楽を聞いたり、浜辺の人を見たり、波や空を見たりして過ごす。本当にただぼーっとしていた。手持ち無沙汰ではあったし、ずっと見ていられる、みたいな感じでもなかったのだけど、すぐに移動したいとも思わなかった。あともう少しここにいよう、を小さく繰り返していたら時間が経っていた、という感じだった。

私はあくせくした人間で、寄り道したり、ちょっと足を伸ばしたりするのが苦手だ。それが今日はできたというだけで、いい時間を過ごせたと思う。最近は仕事が少なくお金も不安で、だからアイスコーヒーも小さいサイズを買ったりしているのだが、こういう新しい、自分にとっては珍しい時間の使い方をできるのは暇だからに他ならなかった。

太陽が少しだけ低くなってきていて、わずかにオレンジがかっている。夕陽が海に沈むまで長居するつもりはなかったので、今の空の様子を撮る。それから、さっき浜辺で撮った動画をインスタグラムにアップ。このあたりに住んでいる人何人かからメッセージをもらう。意外とこのあたりで生活している知り合いもいるんだな。もっと早く知っていたら連絡したかもしれなかった。実際には起こらなかった、その人たちと会って過ごす時間を思い浮かべて楽しい気持ちになる。新宿へ帰る電車に乗る。

*1:先日の「お金日記」と今日の日記の間の日々について。紙のZINEだけでなくこのブログでも、codocを使って有料販売できたらと考えています