ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

この方があたたかい[2021年12月4日(土)晴れ]

来週以降の土日はけっこう忘年会やクリスマス会などで埋まっていて、予定のない土日は年内だと今日が最後。変異株が出ているなか、そして年末で仕事も立て込んでいるなかで大丈夫なのかひやひやしているけど、とりあえず今日明日を有意義にすごそう、と思う。

午前中、笑えるラジオを聞きながら作業。お昼は出かける恋人と一緒に駅前でカレー。本当はそのタイミングで一緒に出かけられたらよかったのだけど、準備が間に合わなくて、ひとりで一旦家に帰る。日記本の発送準備をしたりしてから吉祥寺へ。

 

ここで書いていなかったのだけど、先月から吉祥寺にあるブックマンションで一棚本屋さんをはじめた。いろんな人が月額でお店の一角を借りられて、そこで古本や自分で仕入れた新刊、自分のZINEなどを売れる店。下北沢のBookshop Traveller、渋谷ヒカリエの「渋谷○○書店」など、同じコンセプトのお店はいくつかあるのだけど、私は今年の3月に吉祥寺ZINEフェスティバルに出た縁もあってここを選んだ。ZINEフェスの主催がこのお店と同じ方なのだ。

 

単純に本を仕入れて売るという流れを(いわゆる古本屋や新刊書店とはまったく違うものではあるけれど)体験してみたかったとか、はじめた理由はいくつかある。でも、一番大きいのは「コロナだからこそ対面で人と接する機会を設けたい」ということ。私は出不精だし誰かを誘うのも苦手で、放っておくとまったく人と会わないことが続いてしまう。ブックマンションは自分が店に立ってお店番をする制度があるので、これをうまく使えばいろんな人と会うことができるのではないかな、と考えた。いろんな人というのは知り合いもそうだし、知らない人も含まれる。まったく知らない人や、「友達の友達」くらいの距離感の人との出会いがコロナになってから本当になくなってしまって、自分の人間関係が広がっていかないことにも不安を覚えていた。どうしても見識が狭くなる気がしていた。

もちろんインターネットを使えば新しい人との出会いはいくらでもある。でも、偶然性はやはりネットよりもリアルな街の中のほうが強く働く気がする。それにネットで少し言葉を交わすことと、数分立ち話をするのとでは、立ち話のほうがその人の存在をちゃんと覚えられる。たたずまいとか、声のトーンとか、言葉以外の情報が多いからだろう。

 

今日は「紅茶と文学」という棚の方がお店番をしていた。挨拶をして、「最近借りはじめたんですよ」と話す。「どの棚ですか?」と聞かれて「54番です」と返すと、「お店の名前は?」と聞かれる。「Awesome Bookshelf(オーサム・ブックシェルフ)です」と答える。この店名、私の名前がおさむなのでオーサムというただそれだけなのだけど、改めて考えると初対面の人には伝わらないしめちゃくちゃ大風呂敷を広げている感じがする。横文字で書くと余計に……答える時も小声になりそうになってしまった。もともと小さな音を無理やりアンプで増幅させたみたいな、そんな声の出し方だった。

棚を見て、本を補充する。以前どんな本を置いたのかメモしていなかったのでわからないけれど、数冊は売れただろうか。しかし自分の日記本『消毒日記』は、3冊入れておいたものがそのまま残っていた。誰かが手に取って読んだような痕跡はあるのだけど、購入にはいたらなかったらしい。

こういう棚の飾り付けとかポップを用意するのが本当に苦手で、説明とかも一切つけなかったし、まあそりゃそうか、と思う。新しい日記本を置いて、「棚主の日記ZINEです 各1000円」と書いた名刺サイズのカード型ポップを設置する。カードの縁を蛍光マーカーで囲むなど精一杯の装飾性を発揮したつもりだが、明らかに棚が淋しい。見本誌を設置しつつ面陳するとか、もっと工夫が必要そうだ。12月29日にお店番をするので、それまでに少し考えよう*1。売れていたら補充しようと思っていた『消毒日記』はそのまま持ち帰る。

 

地元の駅に戻って本屋を物色。松岡宗嗣『あいつゲイだって』、スズキナオ『遅く起きた日曜にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』など購入。ここ2ヶ月ほど本を全然読めずにいたのだけど、最近気になる本ラッシュでわくわくしつつ焦る。

家で中島岳志『思いがけず利他』読了。相手のためを思ってした(利他的な)行動が気づくと「ぜひそうしてほしい」といった(利己的な)支配につながってしまう、メビウスの輪のような構造を解きほぐす。では利他とはいったいどんな状況でもたらされるのかを考えた時、中島さんは利他は受け取り手によって生み出されるものだとしている。「私たちは他者の行為や言葉を受け取ることで、相手を利他の主体に押し上げることができる」というのは美しいなと思った。美しいといえばこの本の装丁もそうで、さっき本屋で見て部屋の本棚に置きたいたたずまいだよなあと思った。kindleで買ってしまったことを後悔。

 

夕方まで仕事のゲラ読みをして、日が暮れた頃にプールへ。

夏に比べるとだいぶ人が少なくなった。去年の冬よりも閑散としている気がするけれど、何かあったのだろうか。あるいは去年の冬に盛り上がる何かがあったのか。軽く準備運動をしてから入水。水がぬるま湯のようにあたたかい。冬のプールは寒そうなイメージがあるから敬遠されがちだけど、今どきだいたい温水だからまったくそんなことはないのだ。寒くなればなるほど、温度が一定に保たれている温水プールのあたたかさは相対的に増していく。今ここにいる少ない人たちはそのことを知っている、と、秘密を共有するような仲間意識を抱きながら泳ぎ始める。今日は1500メートル。

ここのプールは今月の下旬から2ヶ月ほど、設備の工事のため休館になるという。老朽化しているからかいつも工事をしていて、今年の2月か3月にも1ヶ月ほど休館していた記憶がある。つい先日も設備の不具合でいきなり10日ほど休館していた。それは全然いいのだけど、休館中はどこで泳ごうかな、と思う。

 

今日の新規陽性者数は19人、現在の重症者数は2人、死者0人。

*1:年末、よければぜひ遊びに来てください。私の日記本を買わなくても、いろんな人の棚をみるだけで楽しいと思うので。