ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

甘いものが食べたかった[2021年4月24日(土)晴れ]

午前中に少し作業。思ったよりも手こずってしまい、昼にかかってしまった。恋人と一緒に『リコカツ』をだらだら見ながらレトルトカレーで昼食。今日は午前中、朝食を食べながら『生きるとか死ぬとか父親とか』『ソロ活女子のススメ』も見た。今期は他にも『大豆田とわ子と三人の元夫』(これが大本命)、『コントがはじまる』も見ていて、『今ここにある危機とぼくの好感度について』も気になっている。1クールでこんなにたくさんドラマを見るのは生まれてはじめてかもしれない。

 

昨晩放送の『生きるとか死ぬとか父親とか』は、坊主だった父親が突然カツラ姿で帰ってきたが、嫌で嫌でたまらない…というお悩み相談でスタート。実際に「相談は踊る」に寄せられたお悩み相談だったから、「これきたかー!」という感じ。そして「カツラを被っている旦那の妻に自分がなるのが嫌なんじゃない?」というトキコの(というかジェーン・スーの)回答の鋭さ。そしてオープニングのラジオの後ではトキコの父親が急に「顔のシミをとりたい」と言いだし、男性が自分の見た目を気にすることへの何とも言えない逡巡が描かれていく。

私が見ながら思っていたのは、自分に引きつけてしまうけど「LGBTも全然いいけど、身内がそうなのはちょっとイヤ」みたいなこと言う人のこと。関係ない世界の価値観としては受け入れられるけど、距離感の近い人がそうだと冷静ではいられないということはあると思う。そうなったときに「この感じ方はなんだろう?」と改めて正面から向き合ってほしいと思うけど、なかなか負担も大きいし、すぐにそうできるわけじゃない、というのもわかる。

あと、トキコと父親の関係は親子というより恋人的なところがちょっとあって(しかもトキコ自身がそうであるところと、早くに亡くなった母親と自分を同化させているところが入り交じっている)、だから父親が「シミをとる」ことへの拒否感は他の女性の影を察知しているからでもある。「男性の美容は今では普通のことだけど、身近な人がやっていると寛容でいられなくなる」という背景には複数の感情があるのだろう。だから難しいし、絡まっているから投げ出しやすくなる。

父親と仲違いしてしまったトキコが考えを改めるのは、深夜に学生時代からの友人と行ったマッサージ店でのこと。ふと友人が言った「お父さんがシミを取ったのって、自分自身を励ますためだったんじゃないか」という言葉が、パワフルなマッサージ師に顔や体を揉まれる中で腑に落ちていく。それは「男の美容は今では当たり前」みたいな、最新のレディメイドな概念を飲み込むこととはまた別の理解のルートだから、偏見とか、自分の中の黒い感情をまるっと消滅させることはないかもしれない。でも、こういうのってたとえば肩がほぐれると頭痛や目の疲れが軽減される、みたいにつながっていることでもあって、その中で、偏見が発露する前に気付けたり、黒い感情は黒いまま無害化できたりすることがあるのだと思う。

原因と解決の方法をプログラムのようにまっすぐ結んでいないから、ちょっとなし崩し的という気もする。でも、そんなにまっすぐ切り分けられることばかりじゃないと思うし、なんとなく丸く収まって関係が続いていく、という生々しい温かさを成立させているのは親密さだとも思う。他の関係に重ねることができそうでできない唯一の関係があるなあ、と思ったりした。画面にはユーモアや、疲れた誰かを思うやさしさも満ちていて、現在までに放送された3話の中で一番好きだった。

 

午後は編集者の竹田純さんのフェアが開催されている西荻窪の今野書店へ。勝手に小さな書店を想像していたのだけど、思っていたよりも広いし、何よりエネルギーがあるように感じてちょっと圧倒された。けっこうお客さんが多かったというのもあるのかもしれないけど、単に賑わっている以上の何かがあるような力強い感じ。

フェアでは竹田さんが在店(って言うんだろうか)していて、編集した本を自分で解説などしてくれる。「自分が編集したかった本」というコーナーもあって、上間陽子『海をあげる』などがあった。

現在は謎めいた読書家を名乗るカツテイクさんの選書フェアも同じ棚で開催していて、勧められたコルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』、ロベルト・ボラーニョ『通話』を購入。あと竹田さんの編集した本『歴メシ!世界の歴史料理をおいしく食べる』や、フェアとは別で気になった本なども。

雑談の中で竹田さんに「小沼さんも何か書きたいことあるんじゃないですか」と聞かれ、煮え切らない返事。自分がこれなら書ける、書きたいと思うようなテーマがいまいち見つからなくて、漫然と日記を書き続けているところがやっぱりある。日記も面白いし、新たな発見、自分の心への気づきは日々あるのだが、やっぱりこれだけではなあ。方向性が定まらない。

 

明日から三度目の緊急事態宣言で、書店も休業対象という話を聞いていたので焦って今日来たのだけど、明日以降も今野書店は開くという。そういえば、私が制作に参加した雑誌『つくづく』のフェアが代官山の蔦屋書店で今日からGW明けくらいまで開催なのだけど、判断によってはそっちも影響を受けるのでは。心配になる。

しかし今回の宣言は対応の場当たり感が過去2回と比べてもぶっちぎりでひどくて、よくわからないし納得がいっていない。ライブハウスや映画館、商業施設は感染者を出さないようにすごく対策を気を付けているのにその点への評価がないまま強い休業要請が出て、1年間の蓄積が政府の中に何もない。

対策を8時以降の消灯はかえって危険になりそうだし、アルコールの提供禁止、外飲み取り締まりとかも……一般庶民が我慢すれば神風が吹くとでも思っているんだろうか。GWの過ごし方を考える。変異株は怖いし、医療現場の負担を考えても外出の機会は絞るつもりだけど、ずっと家にこもっているだけというのも、それでいいのかなという感じがしている。補償もあまりにも粗末だし。

 

西荻窪から帰って、その足でプールへ行こうと思っていたけど一旦帰宅。スポーツジムも休業するところがあると聞くし、区民プールなんてめちゃくちゃ休業しそう。それなら絶対に行っておきたいと思ったけど、最寄り駅に着いた時点で妙に疲れていてとても行けそうになかった。帰り道、近所のケーキ屋でシュークリームとケーキを買う。甘いものが食べたかった。