ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

軌道[2021年12月29日(水)晴れ]

午前中にいくつかの原稿の赤字を戻したあと、2日分の日記書き。それから古本や自分のZINEをまとめて吉祥寺へ向かう。今日はブックマンションではじめてお店番をする日。

 

お店へ向かうと運営の中西さんがいて、鍵の開け方やお客さんが来た時の対応のしかた、どこに何があるかをざっと説明してくれる。ただ、基本的にはこちらに任されている感じ。適度な余白があるとこちらも考えるから、参加している気になっていいなと思ったりする。

13時から開店。すぐにお客さんがちらほらと来る。地下にあるお店で、わかりやすい看板も出していないので入りづらいと思うけど、みなさんどこかで知って来ているのだろうか。地上からの光が差し込む中、熱心に本棚を見ているお客さんの様子を、というよりその光景をぼんやりと眺める。文フリやイベントとはまったく違う、小さな本屋らしい静けさ。スピーカーの音量を一段階下げた。

少しするとお客さんの数が増えてきて、知り合いも来てくれる。Kさんがちょうど吉祥寺に用があったそうで、顔を出してくれた。SNSではたまにやりとりしていたけど、顔を合わせるのはかなり久しぶり。ちょうどアーティストのNくんも来て、カウンターに座る私を見ながら「一日店長的な感じ?」と、かわいい表現。クリスピークリームのドーナツを差し入れてくれ、今日仕入れたばかりの千葉雅也『デッドライン』を購入してくれた。来客が重なってばたばたした時間だったので二人とゆっくり話せなかったのは残念だったけど、年末に顔を見て少し話すことができたのはうれしかった。

 

棚主さん(私と同じように棚を借りている方)も何人か訪れて、自分の棚の整理に来た「にちようだな」さんは私の日記本や編集した雑誌を買ってくださった。にちようだなさんの本棚も気になったが、店番をしていると意外と忙しかったり気が抜けなかったりして、じっくり見ることはかなわず。また今度しっかり見たい。

同じく棚主の「南と華堂」さんもいらっしゃった。南と華堂さんはブックマンションで1年間棚を借りたのち、日野市に自分の本屋さんを開いたという。「自分の店が忙しくてなかなか来られないから、来月で退去するんです」とのこと。猫本のフェアをするということで、猫にまつわる本をたくさん買っていかれた。

 

営業は17時までで、思った以上にあっという間。閉店間際のタイミングでは同い年のHくんや、AさんとNさんも来てくれる。締め作業をしたのち、Aさん、Nさんと忘年会。Nさんは昔吉祥寺に住んでいたそうで、その頃からある食堂に行ってみるも満席。別の店にふらっと入る。少しすると恋人も合流して、仕事の話、二人が引っ越した街の話、それぞれの来年のことなどを話す。

来年のことを聞かれて、「私は興味を持ちながら手前で踏みとどまることが多かったのだけど、最近になってそういう自分に飽きてきた」という話をする。その心境の変化が、こうしてブックマンションでお店番をしてみることにもつながっている。「目的地を決めて最短距離で目指すより、流されながらいくほうが性に合ってると気づいた。あと、それを受け入れたんだ」と言うと、「昔はもうちょっと頭でっかちだったけど、良い変化だね」「もう30やもんね」と目を細めながら返される。親戚のおじさんみたいだ。二人とは気づけばもう長い付き合で、彼らにしか話していないこともある。

今年を総括しようとしても、なんだかうまく言葉が出てこない。だけど未来について話す時、思い描く軌道は過去の軌跡からつながっていた。逆算的に浮かび上がってくるのが今年、なのかもしれない。

店に私たちしかいなくなるまで話し込んだ。吉祥寺には色々お店があるから、年末年始の買い物をしたいと思っていたのだけど(良いと聞いた茅乃舎のだしパックを、雑煮と年越し蕎麦用に買いたかった)、もうどの店も閉まっている。

 

今日の新規陽性者数は76人、現在の重症者数は1人、死者0人。