ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

五感[2021年4月21日(水)晴れ]

2〜3日ほどの作業時間を見込んでいた仕事が流れて、ぎちぎちに詰まっていたスケジュールに少し余裕が生まれた。転職して水曜休みになった友人からたまたま連絡があって、日中から会うことにする。午前中だけ仕事をして、パソコンもiPadも置いて渋谷へ。ホームの自動販売機で買った水を飲んで、味や冷たさを鋭敏に感じる。最近は食欲があるのかないのかよくわからないような感じだったけど、スパイスの効いたものなら食べられる気がして、カレー屋に入った。全部食べた。

 

そのまま表参道のほうまで歩く。途中で青山ブックセンターに寄る。もともと行きたかったのと、ちょっと涼みたいという気持ちのため。夏のような日で、歩いているだけで汗ばんできていた。しかし店内に冷房などは効いておらず(まだ4月だし、当然だと思う)、あまり体温は下がらない。ぶらぶらと興味のある棚を見て、本を2冊買う。中身がなくて軽かったトートバッグが、少し重くなって安定した。

エスカレーターをのぼって外に出て、通りに向かう。ビルとビルの隙間を強い風が吹くと、汗が冷えてすぐに肌寒くなった。ついこの間桜が散ったと思ったばかりなのにもう夏めいていて、移り変わりの早さに感覚が追いつかない。雲ひとつなく晴れているから大通りはまぶしいほど陽を浴びていて、また少し汗をかく。用もなくspiralに入る。たまたま開催していた展示で五木田智央の『Save the Last Dance for You』(2021)という大きな絵が飾られていて、見ていると、というか目の前に立っていると妙に落ち着いた。

五木田智央はモノクロの硬質な作品を描く人という印象があったけど、この絵は描かれている主体はえんじ色で、背景は濃い辛子色。解説を見るまで五木田智央の作品だとは思わなかった。iPhoneで真正面から写真を撮って、そのあと少し斜めから、最初に見た瞬間の印象を再現したいと思いながら撮る。

 

約束までまだ少し時間があって、表参道ヒルズのあたりまであてもなく歩く。寝不足と暑さのせいか、会う直前になって疲れが出てきて、歩道沿いのガードレールに座る。植栽から甘い香りがして、よく見かける紫色の花なのに名前がわからなかった。

 

清水湯の前でHと合流。入浴料+レンタルタオルのチケットで入ったらシャンプーやボディソープが備え付けられておらず、「手ぶらセット」を選ばなければならなかったらしい。16時台の銭湯にしてはけっこう混んでいる。ぬるい湯と休憩用の椅子を行ったり来たりしながら、Hの新しい仕事のことなどを話す。風呂場は声が反響して聞こえにくく、私は何度かHの話を聞き返した。

 

風呂を出ると夕方で、Hに「あるものを食べるから、Hがいいなと思った店に入るのでいいよ」と伝えて、原宿駅のほうまで歩く。駅の近くでインバウンド向けらしいのり巻き専門店を見つけて、私もちょっと食欲を刺激されたので入った。海外から旅行客がほとんど来られないから、きついだろうなと思う。小さめののり巻きをそれぞれ4本ずつ食べて、会計をして店を出た。

 

夜は仕事を終えたMと恋人も合流して、代々木公園へ向かう。Mに夕飯何を食べたのか聞かれ、答えたら「ウーバーで一度頼んだことあるかも」と言っていた。公園は暗く、まん延防止措置法のためかオレンジ色の柵が張り巡らされて芝生に入れなくなっている。点在するベンチに人影がある。ランニングサークルの活動なのか、やけに走っている人が多くて、たらたらと歩く私たちをたくさんの人が追い抜いていった。

落ち着ける場所がなくて、ずいぶん歩いたあとで歩道沿いの大きな石にそれぞれ腰かける。恋人が原宿で買ったマクドナルドを食べ始めて、けっこう歩いたから冷めてそうだな、と思う。夜はけっこう肌寒い。月が出ていて、風はなかった。私たちは最近見ているドラマの話とか、また出るという緊急事態宣言についてとかを、お互いの顔も見えない暗さの中で2時間ほど話した。