ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

見える/見えない[2021年12月17日(金)曇り時々雨]

連日忙しかったり忘年会があったりして頭が休まらなかったのだけど、昨晩サウナに行ったので少しリフレッシュできた。朝から準原稿を原稿にしていく作業。病院に行く17時ごろまでを作業時間として確保していたけど、準原稿の時点でそれなりに書けていたので、昼過ぎには一通り終えることができた。全体をうまく俯瞰できていない気がするので頭から見直したいけど、それは来週でもいいような気がする。今日の予定していた作業分は終わらせたんだしと言い聞かせて、Things3のタスクのチェックボックスをタップして「完了」にする。

 

早めに片付いたので数時間がぽっかりと空く。とはいえ完全な余暇というわけにもいかず、明日やろうと思っていた企画案出しをする。お昼を外で食べて、帰ってきたら一気に血糖値が上がってしまったのかひどく眠い。パンツのボタンを外して、横になりながらスマホで企画のためのリサーチをする。

人から見たらだらけているようにしか見えないと思うけれど、仕事してないみたいな感じで仕事をすると、気分転換しながら作業も進められるので良い。でも、こう書くと自分が生産性の鬼になったみたいだ。仕事してるみたいな感じでサボってるくらいでちょうどいいのだろうと思いつつ、フリーランスだとなかなかそうもいかない。

 

16時くらいまでそうして(途中どうしても抗えず、20分くらい寝た)、出かける身支度をしてから自室のデスクでメールチェック。その時、ふと窓ぎわを見ると、長いこと使っていなかったワイヤレスイヤホンのケースの上のほうがまだらに白くなっている。

結露する窓際に置いていたからもしかして錆びた? と思って近づいて見ると、その錆が蠢いている。10匹くらいの小さな虫だった……一瞬思考停止したあとすぐに脳がフル稼働して、キッチンからアルコールスプレーとタオルを持ってきて退治する。そしてよく見てみると、窓枠にも本当に小さな、チリほどの小ささの虫たちが点在して、時々動いている。もう出かけないといけないし、メールもまだ返せていないのだけど、放置するわけにもいかず急いで掃除&退治をした。結露がひどいのに放置していたからか、拭くとタオルが真っ黒になり、自分でもちょっと引く。そしてタオルをじっと見てみても、虫の姿は見えない。それくらい小さいのだ。とりあえず窓枠は一通り掃除したけど、きっとこれで終わりではないだろう。

 

小さな虫が蠢いている姿はインパクトが大きく、傷つけられたような気持ちになりながら病院へ向かう。電車内ではずっとこの虫について調べていた。詳細はわからないけれど、どうやらチャタテムシの一種のよう。チャタテムシは体長1ミリ前後の比較的すばしこく動き回る虫で、屋内にいるものは羽根が退化していて飛ばない。古本や段ボールが好物。古本をよく買う人だと、本の上を小さな茶色い虫が動き回っているのをみたことがあるかもしれない。あの虫(の仲間)だと考えられる。私の部屋にいるのは1ミリもなくて、多分0.3〜0.5ミリほど。

調べていると「人に直接的な害はないけど、見た目が気持ち悪い不快害虫」との説明。言葉にするとあんまりだな、わかるけど……と思いながら、駆除の方法を読み込む。カビを餌とするので結露をしっかり掃除して、換気をちゃんとすることが大事、とのこと。たしかに、最近は寒くて私の部屋はほとんど換気をしていなかった。帰ったらまずは窓を開け放そうと思う。

しかしいくつか整合性がとれないところもある。寒いところが苦手で、古本や段ボールが好きと書いてあるのだけど、私の部屋ではワイヤレスイヤホンのケースや窓枠など、金属の上でしか見かけない。実際、窓枠は木の部分と金属の部分があるけど、木の上にはほとんどいない。イヤホンケースのほかにプラスチックの置物も飾っていたのだけど、その置物にもほとんどいなかった。金属の上って部屋の中でも一番温度が冷たくなるところだし、食べ物もなさそうなので、謎……。万が一本棚で大量発生したら掃除も難しいし、居場所を特定できればこちらも対策しやすいので不幸中の幸いだとは思うのだけど。

 

動揺が止まらないまま病院。完治にはあと少しかかるもののきれいに治っているそうで、「これで最後でもいいと思いますけど、どうします?」と先生。私としてももう困っていることは特にないし、年内で終わらせられたらすっきりするので今回で終了ということにする。

はじめて病院に行ったのは5月なので、半年以上通院していたことになる。ようやく終わったという気持ちと、どこか名残惜しい気持ちと半々。先生は本当にやさしく、いつも痛みや術後のことを最大限考えてくださったので本当に感謝している。だけど思い出話を交えながらあれこれ話すのも重いのかなあと思って、「今までありがとうございました」と言って深く頭を下げるくらいに留める。でも本当は菓子折りとか持っていきたい。

 

薬局で薬をもらう。この薬を使い終えたら、治療終了ということになる。それなりに感慨深いのだけど、大量発生した虫たちのことが頭から離れない。アッパーとダウナーが同時に去来し、胸のあたりがずーん……と重く沈んでいく。どうにか自分で自分を救いたく、JR新宿駅構内の成城石井で手巻納豆スナック(数年ぶりに買ってみた。一袋で1000円以上する高級品)とMikkellerのクラフトビールを買って帰った。

 

家に帰り、すぐに窓枠を見る。やはりさっき駆除しきれなかった虫が数匹。改めて観察しながら、本当に小さいなー、と思う。0.5ミリって、パソコンのキーボードの隙間やスマートフォンの画面に落ちていてもほとんど気にならないチリくらいの大きさ。小さすぎて、顔を近づけても脚とか触覚とかがわかるわけではないので、点がちょっと早く移動しているだけ、という感じ。ギリギリ視認できるから気になってしまうけど、もう少し小さかったら気付くことすらないのだろうと思うと、あまり神経質になるのもどうなんだという気がしてしまう。害もない虫みたいだし。

それに私は今日出かけるためにたまたまコンタクトをつけていたから気づいたけど、家では基本的に少し視力を落とした眼鏡で過ごしていて、眼鏡のままだったらいつまでも気づかなかった可能性が高い。見えると見えないの境界線も、そう考えると不確実なものだ。

そういえば、数週間前に一匹の虫を窓際の壁で見かけたのだけど、(この部屋で虫を見かけるの珍しいな〜)くらいに思ってスルーしていた。つまりあの時から繁殖していて、たまたま気づいたのが今日だった、という可能性が高い。だとすると、ますます神経質になるのは滑稽な気も。

星空と同じで、よく見ようとすればするほど見えてくる。先日の戸隠出張の最終日、山の中の駐車場で星空を見上げたことをふと思い出す。

しらみつぶしに一匹一匹を叩いてもきりがないし、結露をこまめに拭く、数が多いなと思ったら駆除する、を繰り返して発生しにくい環境を作っていくしかなさそう。

 

今日の新規陽性者数は20人、現在の重症者数は3人、死者0人。ウイルスは目に見えないけどそこにあるものの代表的存在。