ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

縁遠くなったもの[2020年1月30日(土)曇り]

皮膚科の帰りにマクドナルドへ。昨日の夜に恋人とテレビを見ていたらチキンタツタのCMが流れてきて、「久しぶりにマック食べたいなー」「明日の昼、食べちゃう?」と話していた。

コロナ禍で混雑を避けるためか、アプリから注文できるようになっていた。皮膚科の会計を待つ間にオーダーを確定し、商店街を抜けてマックへ向かう。早めにできちゃったら冷めるし店員さん待たせるし申し訳ないよな、と思って急ぎ足で向かったのだが、そもそも店に着いた時点ではまだ作り始めてすらいなかった。アプリには「店舗に到着したら押してください」みたいなことが書かれたボタンがあって、それを押したら作り始めるらしかった。先に作っておいて、到着したら奥から出してくるのかと思っていた。だったら商店街の真ん中あたりで押しておけばぴったりだったかもな、などとせこいことを思う。まあ、ここのマックはいつもお昼時は店に入りきらないくらいの行列ができているから、注文時に並ばないだけで大幅な時間短縮になっているのは間違いないのだけど。

 

手を洗って昼食。久しぶりのマックはおいしかった。食べながら、そして食べた後もしばらく恋人とだらだら録画していたNHK『金曜日のソロたちへ』を見る。一人暮らしをしている人たち(ソロたち)のある夜を、定点カメラで撮影したバラエティ。登場するソロは毎回3人。画面が常に4分割されていて、上の2つと左下にそれぞれの映像が同時進行で流れている(右下にはストレッチマンがいて、無言でストレッチをしていたり時折視聴者からのおたよりを読んだりする)。

情報量は多いのだがMCの能町みね子さん、ノンスタイル井上さんがあんまり煽ったりしないので、そのゆったりとしたテンションが心地良い。特に拾われないまま流れていくシーンがたくさんあるのも、一人の夜というものの小宇宙感とよく合っている気がする。

録画していたのは恋人。「なんで録画したの?」と聞いたら「年末にたまたま見て、面白そうだったから」とのこと。恋人はこういう一般の人の素顔や家の様子がわかる番組が好きらしく、『家、ついて行ってイイですか?』も毎週欠かさず見ている。恋人が見ていると、私もつい見てしまう。

『金曜日のソロたちへ』では挿入歌としてLucky Tapesの「Lonely Lonely feat.Chara」が使われていて、午後はLucky Tapesを流し聴きする。なんとなく最大公約数的な音楽という印象があってあまり積極的に聴くことはなかったのだけど、番組での流れ方が本当によくて、少なくともこの曲については表情のあるものになった。この曲ばかり繰り返し聴いてしまう。

 

夕方から桃山商事「どうして男は恋人より男友達を優先しがちなのか」を読む。ゲスなエピソードと人間関係の真理を突くような気づきを繰り返す3人の「NEO恋バナ」は安定の面白さ。

生理の章などはかなり勉強になったというか、勉強しないとなと思った。ゲイだと日常的に女性の生理について触れたり考えたりする機会が本当にないし、異性愛者の男性よりも知識がない人もけっこういるんじゃないかと思う(セックスをめぐる利害関係や、「元カノの様子はこうだった」みたいな断片的な知識もないので、まっさらな状態で学びやすいかもとは思う)。誰か女性と恋愛をしたり同棲したりすることは今後もないかもしれないけど、とはいえ一緒に仕事をしたり遊んだりすることはあるから、基本的なことは知っておかないといけないなと思った。知らないと、それをないものとして考えてしまうから。

 

「恋愛の貸し借り」の話も興味深かった。我が家では私が主に夕飯を作り、恋人が皿を洗ってくれていて、これは分担したわけではなくていつのまにかこうなったのだけど、私は「自分がご飯を作っているのだから、この人が皿を洗うのは当然」みたいに思っているところがちょっとある。「お皿を洗ってくれるのだから自分はおいしく作る役割をちゃんとこなそう」とか、「洗い物を出さないようにしよう」みたいに思ったことが多分なくて、そのことに気づいてはっとなった。「借り」の感情がなくて、「貸し」の感情ばかりが大きいという、アンバランスな状態になっている。

ご飯を作る方が時間がかかるし、なんていうか家事として華があるから、なんとなく自分のほうが大きなことをやっている、負担が大きいような気がしていたのかもしれない。しかし実際には私も料理を楽しんで作っていることが多いし、こういうのは習慣化するとどんどん滑らかになっていくので、必ずしも負担が大きいとは言えないだろう(何を持って負担とするのか、という話ではあるけど)。

うーん、むしろ私は皿洗いに面倒くささがあり、その作業を押しつけている後ろめたさをもみ消すために「当然」という考え方を採用してしまっている気もしてきた。借りの感情がないのではなく、普通にしていたら大きくなりすぎるから、逆に一切見ないようにしてしまっている、というか。ここは考える&恋人と話してみる余地ありだな。

そんなことも考えたけれど、基本的には笑いながら読めて、300ページくらいある本だけどあっという間に3分の2以上読んでしまった。恋バナとか恋愛をしたくなる。

 

なんだか一人暮らしとか恋愛とか、今の恋人と一緒になってから縁遠くなったもの、その中にある豊かさに触れる一日だった。今の恋人との生活が好きだし、またしたいというのは違うのだけど、もっと色々経験しておけばよかったなあと少し思う。