ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

2020年3月14日(土)雨のち雪のち曇り

昨日はあたたかかったのに、今朝はずいぶん冷え込んでいる。起きてシャワーを浴び、出かける用事があったので、今年買ったばかりでお気に入りの毛足の長いセーターを着た。私は気に入っている洋服を温存してしまう癖があり、これも数えるほどしか着なかった。冬物の洋服を着るのも今日が最後かもしれない、と思う。

 

昼前に家を出て、雨のなか渋谷へ。朝からずっと担々麺が食べたくて、ヒカリエの1階にある「香家」を目指す。

担々麺欲をおさえきれず来てしまったが、今晩は転勤が決まったHの送別会で、友人たち6人で中華を食べに行く約束をしていた。ランチセットの飲茶は我慢し、麺だけを注文。かための細麺で、山椒が効いていてかなり好み。

香家は以前、取材の帰りに銀座のお店にも行ったことがある。調べたら池袋や新代田、中目黒などにもあるそう。家の近くにもできないかな。

 

食後はヒカリエの中にあるスターバックスで仕事と読書。それから、転勤するHにあげるプレゼントを友人たちとLINEグループで相談。私がなんとなく提案したチェキが採用される。Hは写真好きでカメラも何種類か持っているし、送別会での思い出作りにも役立つだろう。メッセージを書いたり、一緒に撮って相手にあげたり、いろんな使い方ができるし。

懸念事項はすでに持っているかもしれないことだ。HのSNSをチェックする。なんかちょっとストーカーっぽい。数年前、彼の家で飲んだ時に「おしゃれな部屋に住んでるね〜」などと言って動画を撮ったことを思い出し、その動画も見返す。Hやその他の友達の姿も写っていて、みんな今より少しだけ若い。懐かしいな。夏のことだった。

 

コーヒーを飲み終えても雨はやまず。天気予報を見たら夕方までは降り続けるらしい。やむのを待っていたら約束の時間になってしまうので、今日の目的だった青山ブックセンターへ。冬に逆戻りしたかのような寒さのなかを歩いて向かう。花田菜々子さんの新刊『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』、通称『シン家族』を買おうと思っていたのだけど、そもそもまだ発売されていなかった。なんか最近、こういう不注意が多い気がする。

新刊棚を中心に物色し、夏葉社の永井宏『サンライト』、大前粟生『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』の2冊を手に取る。それからなんとなく漫画も読みたくて、話題書コーナーにあった平庫わか『マイ・ブロークン・マリコ』をジャケ買い

谷口菜津子さんの『彼女と彼氏の明るい未来』1,2巻も気になった。原画?や色紙も展示されていたし、イラストがカラフルでポップだから目に止まる。だけどたくさん買うと荷物が増えすぎてしまうし、こちらは近所の書店で探してみよう。

 

会計をしていたら、『サンライト』にカバーをかけようとした店員の人が「この本、少し角が折れてしまっているので新しいのを持ってきますね」と言う。折れていることは気付いていて、あまり気にならなかったからそのまま持っていったのだけど、わざわざそう言っていただいたのでお願いしてしまった。あまり流通のことがわかっていないのだけど、あの角が折れた本はいったいどうなるのだろう。そう考えたら「(変えなくて)大丈夫です」と言えばよかった気がしてくるけど、折れていない本を手に「こちらでよろしいでしょうか」とにっこり微笑まれると、なんか今さら引き返せない。やさしくしてもらってありがたいような、後ろめたいような気持ちに。

 

会計を済ませて出口へ向かうと雪が降っていて、聴いていた寺尾紗穂の新作『北へ向かう』によく合った。アルバムでは「選択」が好きだ。歌詞がさみしくて。


渋谷駅まで戻り、ビックカメラでチェキを購入。まだ時間があったので、そばのドトールでまた読書。まず、最近読んでいた『LGBTヒストリーブック 絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』を最後まで読む。アメリカでの1世紀以上におよぶLGBTの権利回復運動の歴史を、子ども向けにわかりやすく解説した本。子ども向けとされてはいるが読み応えたっぷりでかつわかりやすい。HIVについて書かれた1980年代、90年代のところなどは、身近なHIVポジティブの人のことを思ってちょっと泣いてしまった。

そしてこうして歴史をたどってみると、今の日本で起こっているLGBT関連の論争の多くが過去すでに議論されていることがわかる。一部のフェミニストによるトランスジェンダー女性への攻撃なども近い前例があったし、同性婚をはじめとする同性愛者の権利に反対する人の言い分も同じ。

アメリカと日本で背景は違うし時代も変わっているのに、LGBTの権利を抑えつけるロジックが同じなのは、こういう言い方は良くないかもしれないけど面白い。その論理の出処となる感覚があるなら、それを感じてみたい気もする。そこからわかることもありそう。

 

続けて平庫わか『マイ・ブロークン・マリコ』を読むが、今の自分には少し過激すぎた。それから永井宏『サンライト』も少し読む。最初の文章がトム・ウェイツのCDにライナーノーツを寄稿したことの文章だった。トム・ウェイツは先日行った居酒屋でもかかっていて、なんだか最近思い出させられることが多い。

店を出て、トム・ウェイツ「Ol’55」を聴きながら渋谷駅へ。はじめて新しい銀座線のホームを使った。外苑前駅で下車して中華を食べに行く。広い店だが、店内には自分達しかいなかった。

 

何人か遅れてくる人もいたが、本日の主役Hが来た時点でオーダーをはじめる。円卓のあるお店で、まだ何も料理が来ていない段階からみんなでまわして楽しむ。

誰が言い出したのか忘れたけれど、もともとこの友人たちの誰かが「円卓で中華が食べたい!」と言い出したのだった。それで過去に2回、予約時に「円卓でお願いします」と伝えて中華料理を食べに行ったのだけど、なんと2回とも回転する台のないただ丸いだけのテーブル席に通された。三度目の正直で、今度こそ本当にまわる円卓。そりゃテンションも上がるでしょう。大人数だからいろんな種類を頼めるし、とてもよかった。

 

お腹を満たしたら新宿に移動し、仕事終わりのMも合流して二次会。みんな揃ったところで、Hにチェキを渡す。「昔ほしくて買おうと思ったことはあったけど結局買わなかったんだよね!」とうれしそう。喜んでもらえてよかった。さっそくみんなを写真に撮っている。

Hを含むこの6人はみんなほぼ同い年で、くだらない話だけを延々して盛り上がれる。二次会でもKがBoA「VALENTI」の歌詞を「タイトなジーンズにめり込む♪*1」と斜め上の間違い方をしたあたりからブーストしはじめ、子ども服ブランド「ベティーズブルー」の話などで盛り上がった。苦しくなるほど笑ったのは久しぶりだった。一方、帰り道では「やっぱり毛根が細くなってるのか、髪をセットする時の立ち上がりが弱いんだよね……」とアラサーらしい話もしたり。

 

時間があっというまに過ぎた。「転勤先にも遊びに行くね」と言って別れ、ひとり空いた電車に乗った。

*1:正しくは「タイトなジーンズにねじ込む わたしという戦うボディ」。