ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

写真のように[2021年2月20日(土)晴れ]

午後から恋人とM、H、Nの5人で東京散歩。仕事がひと段落した恋人が「友達と遊びたい」といって2日前くらいにセッティングしたもので、屋外ならいいだろうということで、散歩。HとNは遅れるというので、まずMと東日本橋で合流。近くにあったセブンイレブンでコーヒーを買って、川沿いを目指す。プラスチックの蓋が歩きながらではうまくはめられず、「全然はまらない!」と戸惑いながら笑う。2人がコーヒーを置けそうな場所を探してくれる。「あの上でやったらいいんじゃない?」と指差した方向には上が平らになった背の低い鉄製のポールがあって、それを台にして蓋をはめた。直径10センチほどのポールで、このためにあるかのようなちょうどよさだった。

 

日本橋の路地を歩くも、なかなか川沿いに入る道が見つからなかった。道を間違えたのかな、と不安になりかけた時、「隅田川テラスはこちら」と書かれた案内を見つける。それに従ってコンクリートの階段をのぼると、眼前に大きなスカイツリーと雲ひとつない青空、そして陽を浴びて光る隅田川。思わず3人で歓声をあげた。恋人とMは持ってきたカメラで写真を撮っていて、私もiPhoneで何枚か撮った。

 

隅田川テラスはランナーと犬の散歩をしている人とよくすれ違った。「これどこまで歩けば浅草なのかな」「まあ歩いているうちに浅草だってわかるんじゃない?」「あのうんこみたいなやつ見えるだろうしね」と話していたら、本当にうんこみたいなやつが見えてきて、浅草に着いたのだとわかった。

 

浅草寺仲見世は閉まっていると聞いていたけど、どうやら土日は営業しているらしい。特にどこかの店で立ち止まるでもなく、でも目に入ってくるものに都度反応しながら歩く。人形焼の甘い匂いが漂ってきて、お参りを終えたら何か食べたいなと思う。

 

お参りの時、Mが「二礼二拍手一礼だよね」と言うので「そうだと思う。まあでも、多分なんでも大丈夫だよ」と返して笑われた。階段をのぼってすぐの賽銭箱のところと、屋根のある外陣のところの二カ所で二度お参りをする。どちらも恋人とほぼ同じタイミングで参拝をしたのだが、二回とも恋人のほうが先に終えていた。何をお祈りしたんだろうと思いながら、2人がいるおみくじのあるところへ向かう。「浅草寺は凶が出やすいんだよね」と言っていたMが凶をひいて、私と恋人は吉だった。吉のおみくじは持ち帰った方がいいそうなので、Mだけが境内の所定の場所に結ぶ。

 

恋人が気になっているというレモンパイのお店に行くも、すでに完売していた。お店の人が出てきて、「いつも1時半くらいには売り切れてしまうんです」と言いながらショップカードを渡してくれる。カードに「レモンパイを焼く日:毎日」と書かれているのがかわいくて盛り上がる。

 

その足でMが知り合いのNさんにオススメしてもらった喫茶店「ロッヂ赤石」に行く。Nさんは私も知り合いなのだけど、おしゃれな人なのでおしゃれ筋で有名な喫茶店なのかなと思っていたら、「チェリまほ」のロケ地だった。ドラマは私も見ていたけど、言われるまで気づかなかった。恋人がiPhone歩数計をチェックして、「もう7.8キロ歩いてるよ」と満足げに言う。けっこう歩いて疲れた体に、クリームソーダの糖分がしみる。

 

Mにでんぱ組・えいたその卒業ライブについて聞かれ、感想を言おうとするもなんだかうまく言葉にならない。文脈を知っている人からすると刺さるところだらけだったのだけど、どこから説明すればこの感動がちゃんと伝わるのかわからず、フリーズして「良かった……」みたいなことしか言えなかった。「ハライチのターン!」で岩井さんがえいたそを全力で推した話や、新メンバーが5人加入して10人になった話、meme Tokyo.としても活動している天沢璃人くんがセーラーウラヌスのようだといった話はできたけど、卒業ライブそのものについてはうまく話せなかったのが心残り。

 

ロッヂ赤石を出て、ようやくH、Nと合流。「天気がいいから隅田川沿いを散歩しようって話だったのに」と大遅刻を詫びつつ笑う2人。日が暮れはじめていて、店に入った時と比べると気温が低くなっているのが感じられた。そのまま合羽橋のほうへ5人で歩く。時間も時間だからか、時節柄か、閉まっているお店も多かったけど、空いているお店をいくつか見るだけでじゅうぶん楽しい。中華料理の器などを扱うお店で、れんげを買おうか迷って結局買わなかった。Nがピータンを買っていた。

 

巨大なカブトムシの像を掲げている食品サンプル店があり、大仏とかの巨大な像が苦手なHが顔をしかめる。近づいて見るとお店があるのは1階で、カブトムシの像は2階のベランダ部分に取り付けてあるのだけど、誰か住んでるのだろうか。「だとしたら家賃安そう」とM。

 

合羽橋を見終えるとすっかり暗くなっていた。遠くのほうに少しだけオレンジ色が残っているけれど、それもすぐに消えていくだろう。大きな道路沿いをまっすぐに歩いて上野を目指す。途中でエヴァンゲリオンの話になり、そこから90年代の空気感についての話。Mと二人で「あんまり90年代の記憶ってないんだよね」と言い合う中でバスジャック事件の話になり、ちょうど事件が起きていた時に家族で車を使って旅行をしていて、母がすごく怖がっていたのを覚えている、という話をした。

 

上野駅に着いて、歩道橋の上で「夕飯どうする?」という話に。恋人が「テラス席みたいな外だったらいいけど、それ以外だったら今日はなしかな」と言う。私はもう警戒心がけっこう緩んでいてどこでもいいような気持ちになっていたので、貫くのすごいな、と思う。検索してテラス席のあるお店を探して、恋人が電話をかけて予約をしてくれた。みんな外席を探すだろうし、当日飛び込みで見つかるんだろうかと思っていたから、スムーズに見つかってよかった。

 

お店はビルの6階にあるイタリアンで、階の半分くらいが屋根のないテラスになっている。MOET&CHANDONのパラソルがあったりして妙なパリピっぽさが漂っていたけど、料理もおいしかったしスタッフの方も親切ないいお店だった。「こんなことがないと絶対入らなかったけど、良いところだね」と言い合う。見上げると月や星が見える。

 

最初はBGMにFISHMANSのカバーが流れていて、それからBTSやTENDRE、Suchmosなども流れた。時々地上を救急車が通って、そのサイレンの音がビル壁に反響しながらのぼってくるのかうるさいことがあったけど、だからといって会話ができないとか、声を張らないといけないとかそういうほどではなかった。

 

Hに「俺たちのこと年取ったな、って感じることある?」と聞かれる。最年少の君は一番その感覚があると思うから、老害みたいになっていたら教えてほしい、というような話だった。私は老害という言葉は使わないしそういう捉えかたはしないと思うけど、違和感があったら何か別の言葉で指摘はすると思う、というようなことを答えて、それからみんなでヤバい思想にハマりそうになったらお互い指摘をしたいねということ、でも私たちもゲイ男性5人ということで偏りのある集団だから、この中での正しさを信じすぎないようにしよう、みたいなことをずっと話していた。

 

ラストオーダーになっても食べ物がまだ全部出ていなかったのでお店側が少し時間を融通してくれた。20時を過ぎてもゆっくり飲み食いをして、21時前に店を出る。いつもならもう一軒行けるような時間だけど、そのまままっすぐ帰る。早く気兼ねなく遊べるような日が戻ってきてほしい。

 

今日は私以外の4人はみんなカメラを持っていて、それぞれのタイミングで写真を撮っていた。たくさんのことを話し、たくさんの景色を見た一日だったので、そのまま日記にするとものすごい長さになってしまいそうだと思って、今回は「書く写真日記」のようなイメージで、細切れのシーンの描写を積み重ねるような書き方をしてみた。だけど結局まあまあ長くなってしまったな。