ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

わかる、歩く[2022年3月26日(土)曇り時々雨]

朝、ベッドの中で千葉雅也『現代思想入門』読み進め。評判は聞いていたけれど、たしかにこれはかなりすごい本。私は「今年ベスト」みたいなことを考えたり言うのが苦手なのだけど、今年出た本で誰かに一冊だけ勧めるとしたらこの本を勧めるのではないかと思う。まだ3月だけど、年末までずっとそうである予感がある。

自分には手に負えない気がして正直あまり体系的に学んではこなかった現代思想の哲学者たちの言葉が、大掴みではあるがちゃんと理解できる。千葉雅也さんの文章は腹落ち感があるというか、身体性をともなった「わかる」感覚が魅力だと思っているのだけど、その持ち味が存分に発揮されている。

難しい本が読めずに挫折することや、力不足かもと思って避けることは悔しいことで、その悔しさがより読むことを遠ざける。でもこの本では「わかる」という小さな成功体験を積み重ねていけるので、とにかく読んでいて楽しい。何かを理解し、世界の見え方が変化していくことの喜びがある。

もちろんこれだけですべてをわかった気にならないよう注意する必要はある。でも、わかった気にならず、でもだいたいわかっている、という態度は両立するだろう。この本の語り口自体が「必ずしもすべてわかっていなくても、話し始めることはできる」という明るさに裏付けられているものだし、そうした不完全さ、不明瞭な部分の捉え方は、実は現代思想の哲学者たちの思想ともリンクしている(もちろん、そこには千葉さんならではの解釈も含まれているのだと思うけど)。

それにしても私がぐるぐる考えて答えが出ないと思っていたことや、今日的なテーマだと思っていたこともすでにドゥルーズやらフーコーやらが考えていたんだな。自分が壮大な回り道をしていたことがはっきりするようで恥ずかしいのだけど、まあ反省はそこそこにして、次からちゃんと使っていけばいいと思う(ことにする)。

 

午前中に恋人と一緒に駅前のパン屋で朝食。私はそのまま電車に乗って、まず新宿の本屋で新刊をチェックする。電子書籍で読むことが多くなってしまって、大きな本屋に行くのも久しぶりだった。そうしていると12時で、まだお腹も空いていなかったのでプールへ。2100メートル泳いで、上がったあともあまり疲れていなかった。先日行った時は体が重くて1000メートルしか泳げなかったのでえらい違い。いつもは夕方だけど、昼に行ったのがよかったのかもしれない。早い時間のほうが明らかに疲れていなくて、たくさん元気に泳げる気がする。

 

それから代々木八幡へ移動。同じく新刊チェックのため、久しぶりにSPBSへ行ってみる。代々木八幡から渋谷駅へ向かう途中の「奥渋谷」と呼ばれているようなこの一帯、前はこんなに人が多かったかなと驚く。春らしい服装の若い人がとにかく多い。SPBSもかなり賑わっていた。しかしどんどん本のスペースが少なくなっている気がしないでもない。ちょっと寂しいなと思いつつ、自分も韓国の食器フェアみたいな一角で売られていたソジュ(韓国焼酎)グラスを手に取った。ムラサキ色の木蓮が2輪描かれていて、透明なお酒を注いだらきれいだろうなと思った。他にはリトルプレスや、オカヤイヅミ『いいとしを』など購入。

 

もう16時近かったけれど、なんとなくお昼ご飯を食べ損ねてしまっていた。文字通り店の外まで人が溢れているようなFUGLEN TOKYOや、「かかん」という鎌倉で人気の麻婆豆腐屋さんが4月にできるという張り紙を見ながら、駅のほうへ戻る。この時間だとランチは終わってしまっているし、意外なほどお腹が空いていなくて何が食べたいのかわからなかった。そのうち代々木上原駅にサブウェイがあったことを思い出し、代々木八幡を通り過ぎて上原まで歩く。去年の後半は通院のためによく来たなあと思い出して、少しだけ懐かしい。サブウェイでサンドだけさっと食べて家に帰る。よく歩いた一日だった。

 

今日の新規陽性者数は7440人、現在の重症者数は35人、死者18人。