ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

泳ぎ方[2022年2月15日(火)晴れ]

眠りが深くて起きられず、ベッドから出たのは9時。肉体的には疲れていなかったのだけど、やっぱり緊張していたんだなあと、昨晩のことを思い出す。1年ほど前にゲストで出たポッドキャスト「戸田真琴と飯田エリカの保健室」の公開収録イベントがあって、それに呼んでもらったのだった。

戸田さんも飯田さんもこうしたイベントには慣れていてトークも超安定しているので、私は大船に乗った気持ちで特に不安はなかった。立場的にも、運良くでかいクルーズ船に乗り込めた一般人みたいな感じ……しかし不安はなくても人前に出るのはそれなりに緊張する。しかも場所が阿佐ヶ谷ロフトA。イベントが終わって、あの長尾謙一郎さんと大橋裕之さんによる壁画の前でみんなで撮影をする時、スタッフで普段は編集者やライターをしている長谷川さんが「いっぱしのライターになったみたいだ」と言っていて、本当にそうだなと思った。

去年ラジオに出たこともそうだけど、自分には分不相応なんじゃないかと思うような案件が時々舞い込んでくる。しかしまあ、こういう「自分なんかがいいのかな?」と思うような機会を(見た目だけでも)胸を張って引き受けることが大切なのだろう。こういう性格なので、私はいつでも「自分なんかが……」と不安になると思う。だけど動き続けていれば、「不安にならずにすむこと」も増えていくのかもしれない。

 

寝過ごしてしまったので、シャワーを浴びずに仕事をはじめる。朝起きれなかった日はそうやって時間の遅れを取り戻そうとするのだけど、そうするとたいていうまく頭が働かない。今朝も(浴びた方がいいんだろうな)と思いながら、なんとなくいけそうな気がしてスキップして、案の定全然原稿が進まなかった。ルーティンが自分にとって大切なのをよくわかっているはずなのに、焦るとみずから壊してしまう。

 

お昼はSEIYUのご飯にかけて食べるユッケジャンでさっと済ます。そのあとは仕事をして、夕方からプールへ。1800メートル泳ぐ。ただ、今回は長く泳ぐだけではなく、時々50メートルや100メートルを全力で泳ぐのも取り入れてみた。運動して汗をかくと背中がちくちくとかゆくなるのだけど、プールだと同時に水で冷やされるからあまりひどくならない。最初は全力で泳いだら症状がどうなるか、試しにやってみただけだったのだけど、息が上がる感覚が思った以上に気持ちよかった。それに、泳ぎ方の選択肢が広がるのは良いことのように思う。飽きずに続けられる。ペースの調整だけじゃなくて、新しい泳ぎ方も習得できたらもっと良いのだろうけど。平泳ぎや背泳ぎ、できる人に教えてほしいなと思いながらも思っているだけだ。

帰ってきてカオマンガイを作る。茹でた直後の鶏胸肉はしっとりしていておいしかった。鶏肉の茹で汁で作ったスープが好きだなあと思う。おいしいし、なんか得した気分になるので。

 

夜はNetflixで『POSE』。80〜90年代のニューヨークを舞台にボール・カルチャーを通じて当時のLGBTQコミュニティを描いたドラマ。製作総指揮は『ノーマル・ハート』『ボーイズ・イン・ザ・バンド』の(『Glee』の、とかのほうがわかりやすいか)ライアン・マーフィー。「ハリウッドを目指して活動するトランスジェンダーの俳優たちに機会を提供したい」という彼の意志があり、総勢50名以上のトランスジェンダー俳優を起用している。

2月28日でNetflixでの配信が終了してしまうそうで、2話まで見て視聴が止まっていたのを続きからまた見はじめた。今回改めて見ていると、なんで途中でやめてしまったのかわからないほど夢中になっている。ボールのきらびやかな世界も、悲しみの影が濃い一人ひとりの人生にも心を動かされる。ブランカの気高さはもちろん、エレクトラというコミュニティの絶対女王的なキャラクターの存在感が群を抜いている。衣装も言動も派手なエレクトラは、物語の中盤で「完璧な身体」を手に入れるために性別適合手術を受ける。しかし、そのことで彼女はパトロンに見放されてしまう。

性別適合手術を受けたらただの女と変わらない」として、価値を見出さなくなる男たちがいる。それは自分の望む体を手に入れたいという女性たちの願いとしばしば衝突する。エンジェルというトランス女性のキャラクターが恋愛をするスタンについても、「シーメール」のポルノに興奮した過去が描かれる。

スタンはエンジェルを性的な対象としてだけではなく、人として尊重しようとしているところが見える(結果的にうまくはいかないのだけど)から、エレクトラのケースとは少し違う。でも、そのままならない欲望がスタンに背負わされていることで、より苦く複雑な気持ちになってしまうというか……。

しかもそうやってパトロンに見放されることは、金銭的なサポートが得られなくなることを意味する。実際、エレクトラは豪華な生活から坂道を転がり落ちるようにホームレスになる。エレクトラに限らず、登場人物たちは一歩道を踏み外せば体やドラッグを売って稼ぐ生活に逆戻りしてしまう。そのことは、彼女ら彼らが置かれている状況の厳しさと、ハウスと呼ばれるコミュニティのつながりの大切さを同時に照らし出す。

今日はシーズン1をラストまで。クライマックスはもはや少年ジャンプか? と思うような胸熱展開もあり、結末はなんとなく予想できても手に汗握った。明日から見るシーズン2も楽しみ。そしてドラマはシーズン3まで製作されているのだけど、ネトフリで配信の望みはほぼ絶たれたわけで、日本で見られる日は来るのだろうか……なんとなく、製作元のFOXが自社の系列のサブスクで配信するため引き上げたのではないかと踏んでいるけれど。しかしネトフリはライアン・マーフィーの作品を多く配信してるので、それらと一緒に見られることは大きなメリットだったのではないかと思うので、やはり残念。

 

今日の新規陽性者数は15525人、現在の重症者数は77人、死者16人。