ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

閾値[2022年2月10日(木)雨や雪]

朝、電気ケトルで湯を沸かそうとして何度もブレーカーが落ちる。この部屋は駅から近いし間取りも気に入っているけど、冬によくブレーカーが落ちることが難点。もう5年以上住んでいるのでなんとなく一度に使える電力は把握していて、ケトルやレンジを使うときはいつも気をつけているのだけど、今日はそれでもダメ。マンション全体の電力消費が増えているからなのだろうか。雪の予報だから、みんな暖房をつけて部屋にこもっているのかもしれなかった。

 

電力の消費量を減らそうと、自室ではなくリビングで恋人と一緒に作業する。明日が締め切りの原稿を書いて、そのあともう少し先の締め切りの原稿をラフに書く。お昼ご飯はねぎ、ほうれん草、ツナのうどん。恋人が転職してリモートワークが増えて以来、お昼ご飯がどんどんちゃんとしたものになっていっている。

今でもレトルトご飯にいなばのタイカレーとか、魚肉ソーセージだけとかのこともあるから、正確には「そういう日もある」というくらいだけど、少なくとも以前はもっと雑だった。昼から包丁を使ったり、2種類以上の野菜を合わせたりすることは滅多になかった。今ではなんなら付け合わせにスープとサラダまで用意していることすらあり、そういうときは(ランチセットかよ)と内心自分につっこんでいる。

 

食べたあとは夕方までまた仕事。途中で少しサボって、YouTubeBTSの動画などを見る。先月から、汗をかくと背中を無数の針でいっせいにつつかれたような痒みが走るようになった。同様の症状はこれまでにもあったけど、もはや別物と言いたいくらいに強くなっていて、症状が出るとじっとしていられない。幸いシャツの裾をぱたぱたとあおいで背中の熱を逃してやればすぐに収まるから生活に支障はないのだけど、体を動かすときにはいつ症状が出るか無意識に気にしてしまっていて、地味にストレスなのだった。

少し調べると、コリン性じんましんというものらしい。この病名を検索すると「BTSのメンバーのVもそうである」という記事がたくさんヒットして、そうなんだ、と思ったのだった。BTS、曲や活動はなんとなく追っているもののメンバーまでは認識できていなかった。ひとまずVがどの人かはわかるようになった。

 

出かけなくていいようにいろいろと食べ物を買い込んでいたはずが、夕方から整骨院なのを忘れていたのだった。みぞれのようなぐしゃぐしゃとした雪が、積もるというより溜まっていて、足元も悪いし、メガネが曇って視界も悪い。メレルのモアブ2を履いていったら、整骨院の人に「トレッキングとかされるんですか」と聞かれ、なんとなくあいまいな返事をする。

施術の途中、状態確認のため肩を大きくまわす。整骨院の人は私の肩甲骨のあたりに手を当てている。

 

「どうですか?」

「少しまわしづらいんですけど、昨日久しぶりにプールに行ったのでその筋肉痛があるのかもしれません」

「あ、やっぱり。やけに緊張が強いなと思ったんですよ」

 

筋肉を使ったことで緊張しているのであれば問題ないですからね、と言って、整骨院の人は引き続き施術してくれる。こんなふうに、この人たちは少し触っただけで体の持ち主である私と同じかそれ以上の情報を受け取っていて、そのことに毎回驚く。この人たちの受け取る力もすごいし、それだけ雄弁に何かを語っているらしい私の体もすごい、気がする。

家の前の坂道で滑らないように気をつけながら帰った。足の筋肉の感じを意識しながら。

 

恋人はまだ仕事をしていて、モニターを真剣に見つめている。後ろからちょっかいを出して、少し話す。ディスプレイの右下を指さして「うやゆき、だって。へー」と言うので見たら「雨や雪」だった。「あめやゆき、だよ」と返すと声をあげて笑う。淡雪とか霧雨みたいな言葉だと思ったのらしい。

 

今日の新規陽性者数は18891人、現在の重症者数は64人、死者13人。