ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

そういう時間[2022年1月9日(日)晴れ 長野]

長野取材に来ていて、今日はその2日目。寝付きはかなり良い方なのだけど全然眠れず、2時間起きくらいに目が覚めてしまう。古いホテルで換気扇の音がずっとうるさいとか、そういうことも関係しているのだろうか。でも、いつもだったら環境に関係なく寝られるのだけど。眠りが浅いからなのか悪い夢ばかりで、殺人犯から身を隠す夢を2回見た。そうしてなんとか寝ようと格闘しているうちに、気づいたらもう起きる時間になっていた。

しゃきっとしたいと思ってシャワーを浴びる。どれだけ待っても、どれだけ温度を上げても水しか出ない。昨日はちゃんとお湯が出たのに、なぜ……同じ時間帯にお湯を使っている人が多いとか、そういうことなんだろうか。しかしもう服も脱いでいるし時間もないので、観念してそのまま浴びる。体感的に「ぬるい」と「冷たい」を繰り返すので、水温も35〜37度前後を行ったり来たりしている様子。バスルーム全体がいっこうにあたたまらないのがきつい。常温のシャワーが当たっているほうがまだマシなので、体の表面になるべくシャワーが当たるように、体を縮めて頭を洗った。これはこれで目が覚めた。

 

部屋で1時間ほどメールの返信をしたり、日記を書いたりする。10時にディレクターの人と一緒に長野市立図書館へ。今回の取材は善光寺の参道に関するもので、資料を色々と調べる。分厚い市史や町史のたぐいをめくりながら、一つの街の歴史や習俗がここに記されていて、でもそれすらほんの一部に過ぎない、というようなことを考える。昨日いろいろな人に話を聞く中で、あいまいだった部分を補完する情報を見つけられてよかった。

図書館を出ると、目の前のお店に数組の行列ができていた。近寄って見ると、タルト屋さんらしい。駅から少し離れているのに行列なんてすごいですね、と言いつつ並ぶ。季節のフルーツと、焼き洋梨のタルトを買った。

 

ホテルに帰る道すがら、「昨日誕生日だったんで、バースデーケーキですね」と言う。誕生日だったことを知らなかったようで「(出張を)ずらせばよかったのに」と驚かれ、何歳になったんですか、と聞かれて「30です」と言ったら「めっちゃ節目じゃないですか」と笑っていた。

30になって何か変わった感じしますか? と聞かれて、あんまりない、逆に30の時って変わった感じしました? と聞き返すと、「いや、全然。何も変わらないんだなって思いました」「誕生日にどこで何をしていたかも覚えていない」という。そういうものなんだろう。私も当日はそんなもんだろうなと予感していたから、こうして出張を入れたところがあるし。

ただその人は30歳の時にそれまで勤めていた会社を辞めていて、そこには節目の意識が働いていたのだそう。やっぱり自分の生き方を考えるうえで、一つの区切りになるものなのだろう。私としては、「11時になったらあれに取り掛かろう」「15時になったら散歩に行こう」とか、そういうことのもうちょっと大きい版くらいの感覚で捉えている。では30になった自分がこれから何をしようとしているかというと、具体的なことはあまり考えていないのだけど。

でも、面白いとか、これは良いと思えないことからは今まで以上にきちんと距離を取っていきたいと思っている。いろんな関係性や状況があるから、ある地点を区切りにすぱっと付き合いや仕事の方法を変えることは、少なくとも自分にはできない。断ったりするのも苦手だ。だけどゆっくりでも、良いと思える仕事の時間と数を増やして、良いと思えないものを減らしていけば、1年後、10年後は大きく変わっていくはず。漠然としているけど、これからはそういう時間になるといい。

 

駅前のそば屋で昼食を食べて、昼から夕方までガイドの方に参道を案内してもらった。すべての予定を終えた頃にはすっかり暗くなっていて、踏み固められてつるつるになった雪道で滑らないように、気をつけながら歩く。昨日と今日はとても天気が良かったけど、来週には冷え込んで、また雪が降るのだという。現地の人がそう言っていた。

帰って、ホテルの部屋でタルトを一つ食べる。

 

長野県の新規陽性者数は135人。東京の今日の新規陽性者数は1223人、現在の重症者数は4人、死者0人。