ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

今のままで[2021年10月27日(水)晴れ]

晴れ、と書きつつ一日外に出ていないので天気に自信がない。作業をするデスクの目の前はすりガラスの窓で、カーテンをかけていないからだいたいの天気はわかる(晴れか曇りかは空の色でわかる。深い庇があるから雨が降っているかどうかは案外わからない)のだけど、記憶がなし。

 

急ぎの原稿の見直しをして朝一で送ったあと、取材から数週間近く手がつけられなかった原稿に着手する。この企画はいつもだいたい取材日から2週間と言われているけど、今月後半は本当に忙しくなることがわかっていたので、もう1週間ほど猶予をもらっていた。おかげでどの締め切りにも遅れることなく提出することができて、忙しさもようやく終わりが見えてきた。

私は締め切りをかなりきちんと守るタイプで、最初に提示された日程が難しそうであれば交渉するし、仮に遅れるとしても「何日までには出します」としっかりことわりを入れる。それは職業ライターとしてけっこう重宝される特性なのだけど、自分としては「肝が小さいから」でしかないと思っている。締め切りを「守っている」というより、「破れない」のほうが近い。

だから私は「締め切りを破れる人」に、引け目を感じているところがある。あんまり締め切りを守れていなそうな人に、締め切りを破ってでも自分の書くものととことん向き合うような、天才肌的なイメージをもれなく投影してしまう。実際にその人が天才肌で、書くものととことん向き合った結果締め切りをぶっちぎっていることは少ないと思うのだけど、自分が小さくまとまっているように感じて、うっすらと傷つく。コンプレックスを刺激されてしまう。

かといって、じゃあいっそのこと締め切りを破ってみるかとか、そういう話でもない。私は時間に追われると雑になるから「とことん向き合う」ために余裕を持って書いているのだし、そもそも締め切りに常に追われる生活がしたいわけでもない。今のままでいいのだ。今のままで、コンプレックスだけを小さくしていけたらいい。でも、それが難しい。こういうふうに、多分それは利点なのだけど、コンプレックスに感じていてうまく生かせていないことが、他にもたくさんあるような気がする。

 

原稿をざっくり書いて、昼ごはんは昨日鍋いっぱいに作ったシチューとパン。朝ごはんもシチューとパンで、夕飯もシチューの予定。カレーとかシチューとか、同じものを食べ続けて飽きるということがあまりない。大鍋で作る料理は食べても食べてもなかなか減らず、その感じを頼もしく思う。食後は原稿の続き。

ひととおり形になったところで、新しい日記本のゲラチェック。あと1週間くらいで入稿なので、いよいよ作業は佳境に。頭から通しで読んでいく。最近、自分の中で色々なものごとへの考え方が変化しているのを感じているので、全然納得できないことが書かれていたらどうしようと(自分の日記なのに)不安だった。でも、読んでみると特におかしなことは書いていなくて安心した。ただそのぶん、これが果たして面白いのかどうかはまったくわからない。初売りは来月の文フリ東京。

 

夕方、月曜から石川旅行に行っていた恋人が帰宅。シチューを食べながらみやげ話を聞く。「トピックを言うね」と、恋人がiPhoneのメモを読み上げ始める。トピックは「針葉樹」、「こんにちは at タクシー」、「バスで焼き芋」、「ポージングの女」など16タイトル。バラエティ番組のエピソードトークみたいだ。「どれがいい?」と嬉々とした表情で聞かれるので、「じゃあ、まずは『こんにちは at タクシー』!」と乗っかる。

 

夜はまた仕事へ。業務量は落ち着いてきているけど気持ちが追いついていなくて、ついパソコンに向かって作業を進めてしまう。この一ヶ月まったくと言っていいほど本を読めていないので、そろそろ読む時間もしっかり確保するようにしたい。

 

今日の新規陽性者数は36人、現在の重症者数は16人、死者2人。