ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

体(からだ/たい)[2021年10月6日(水)晴れ]

文章を書く仕事をしていて致命的だと我ながら思うのだけど、言葉を扱う能力が低下する時期が定期的にやってくる。感覚としては、だいたい1ヶ月ほど普通に書ける時期があったあと、10日から2週間ほど書けない期間がある。書けなさの程度はその時によってまちまちで、あまり気にならないこともあればかなり顕著なこともある。今回は後者で、めちゃくちゃ能力が下がってるな、という自覚がある。書いていて明らかに言葉や表現が単調になるし、喋っていても言葉が出てこなくてつっかえるし、本を読んでも目が滑って内容が頭に入ってこない。あと、この言語力低下期間の特徴として「音楽がすごく豊かに聴こえるようになる」というのがあって、それもいつも通り発動している。

おかげで仕事をしながらかなりもどかしい思いをしているのだけど、今でよかった、とも思う。今週は比較的仕事が少ないので、今なら多少能率が下がっていても困らない。この期間を抜けた直後は頭がフル回転していつも以上に書けて話せるようになるので、来週半ば以降の忙しい時期にちょうど当たればいいなと都合のいいことを考えたりもしている。

 

今日は6時半に目が覚めてしまって、そのまま活動を開始した。日記を書いて、日記本の追加原稿の見直し。言語力が低下している今、見直しとかもっとも避けたい作業なのだが、タイミング的に仕方がない。それでも初稿にしてもらったあとの赤字がなるべく少なくなるように頑張って読んだ。Mに原稿を送信。

 

お昼は恋人が作ってくれた甘辛いひき肉、天かすなどを載せたそうめんチャンプルー。それから、今進めているクラフトビールの案件の執筆・リサーチ。ビールを飲みたくなってくる。しかしまだやることがあるし、そもそも手術から2週間経たないとアルコールは飲んじゃダメと言われている。金曜日で2週間なので、あと少しの我慢。

手術したところは日によって痛みが増減して、直線的に楽になっていくわけじゃないんだなあと道のりの遠さを思ったりする。普通にしていて痛みを感じることは術後も今もないけれど、最近はトイレに行ったあとの痛みがややきつい。泣き叫ぶほどの痛みを10とした時、5くらいの痛み*1

自分の部屋のデスクに長時間座っているのもきつい。今のところ、ベッドに足を伸ばして座って壁に背中を預ける姿勢が一番負担が少ない。マットレスがやわらかいことと、上半身の重さを腰とお尻で分散できるからだろう。そう考えると、私がどうして円座クッションが合わないのかも(痔といえば、という感じだけど、私はかえって悪化するような気がするほど合わなかった)説明がつく。円座クッションは腰を伸ばして座る体制を要請するかたちになっていて、上半身の重さがお尻に集中してしまうのがダメだったのだと思う。ちなみに円座=ドーナツ型は合わないけれど、U字型を意識して座るとちょっと楽。それはお尻だけではなく、太ももの裏でも体重を支えるようなかたちになるからだろう。

 

17時半までそうして原稿を書いて、オンラインで雑誌の打ち合わせ1件。すでに年末号の2021年振り返り特集の話が出ていておののいてしまう。夕飯は昼に恋人が買ってきてくれた材料を使って水炊き。butaji『RIGHT TIME』を聴きながら作る。

 

夜は『みんな政治でバカになる』を読み進める。私には難しい部分もあるけど、これは必読の書では。挑発的なタイトルだけどそれはタイトルとその周辺だけで、色々な認知バイアスについて、感情を抑えてかなり丁寧に説明されている。

たとえば2章では「集団分極化」という、同じ考えの者が議論すると極端な考え方に先鋭化する現象を紹介しているが、これはテロリストを生む温床になる一方で、一般的な討論では不可視化されるマイノリティをエンパワメントする効果もある、と書いている。こういう感じで、さまざまなバイアスや現象の両面をしっかり提示することに心を砕いている印象。多分、著者は自分の筆致や論理展開がなんらかのバイアスを生む可能性にかなり自覚的で、それをなるべく最小化しようと気を遣っているんじゃないかと思う。「都合のいいところだけ見んな」=「バカになるな」という著者の主張を体現する文体が目指されている。

熟議民主主義など、WIRED最新号で扱っているテーマと重なるところもあった。頭に入らないままページをめくってしまったところがあったので、かいつまんで読み返したい。

 

今日の新規陽性者数は149人、現在の重症者数は77人、死者10人。

*1:「痔ろう」でSNSなどをサーチすると痛みを10段階で数値化している人が多くて、これはなんなんだろうと思っていたのだけど、術後に先生から渡される経過観察シートに痛みを記録する欄があり、それが10段階評価になっていたのだった