ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

痔ろうの根治手術/ネットに書かれないこと[2021年9月25日(土)曇り]

朝9時半から肛門科の病院へ。昨日した痔ろうの根治手術(シートン法)の経過観察。痛みはどうですか、と聞かれて「ほとんどないです」と答えると、「それはうれしい誤算です」と先生。誤算ということは、やっぱり普通は痛いのだろうか。

手術をする前は当日のことを日記に書こうと思っていたのだけど、手術前に特に気をつけたこともあまりないし、術中は相変わらず鎮静剤のせいで記憶がないし、術後の痛みもひどくなかったし帰ってからは家でごろごろしていただけだし、特に書くべきことがなかった。ネットで「シートン法」と検索するとサジェストに「痛い」「地獄」などのワードが並ぶので、書くべきことがなかったこと自体が書くべきことだとも言えるのだけど、拍子抜けした、というだけであれば別に手術当日のことを書く必要もない。自分の中に「この日のことを書いておきたい!」という盛り上がりもあまりなかったし、手術当日のことをドラマチックに書いている体験談はググるとけっこう出てくるので、そういうのが読みたい人はそういう人に任せて、自分は「そんなでもなかった」というほうを記録しておこうと思った。

というのは、自分が術前に「シートン法」で検索してみて改めて、ネット上はどうしても刺激的な情報ばかりが浮き上がってしまう場所だというのを痛感したからでもある。痛くなかった人はわざわざ書かないし(ドラマがないし、もともと痔ってちょっと恥ずかしい病気だから公表しない人もいると想像する)、痛かった人はちょっと大げさに書くものなのだと思う。大げさに書く理由は人によってはPV数を稼ぐためかもしれないし、恥ずかしさや情けなさを面白さで覆い隠すためかもしれないし、単純に非日常に興奮して言葉が強くなっているためかもしれない。

大げさな言葉でしか言い表せないくらいつらい思いをしている人もいるだろうから、それぞれの体験を矮小化したくはない。実際、それぞれの体験や言葉は真実なのだと思う。ただ、同時に俯瞰で見るとそういう傾向がある、劇的じゃない話はネットには書かれないということも頭に入れておかないと、不安になりすぎてしまう(実際自分はその傾向をきちんと把握できておらず、超ナーバスになった)。シートン法で検索してこのブログにたどり着いた人、言うほど痛くない可能性もあるし、術前に心配しすぎても仕方がないからあまり不安になりすぎないでください!

 

それにしても、痛み止めを飲んでいるとはいえ本当に痛みが少ない。シートン法は肛門の道(?)と、その脇に空いてしまった痔ろうの道の間に太い輪ゴムを通して、ゴムが縮んでいく力で患部を切っていく……というものなので、常に肉が切られているような痛みを感じるものだと思っていたけど、痛みというより違和感くらいの感じ。痔ろうができた位置が浅いとか、色々理由はあるのだと思うけど、「本当にちゃんと切れてるのかな」と逆に不安になってしまうくらいだ。「早い人は1週間くらい、遅い人は半年くらいでゴムが取れます」と言われたので、とりあえずはこのまま様子を見てみる。

 

来週の金曜日にまた経過観察の予約をして、まっすぐ家に帰る。痛みはないけど、外を出歩くのは若干不安だ。創部(手術でできた傷口)から常に血や浸出液が出ているので保護パットや下着が濡れるし、肛門にゴムが入っているから直腸のセンサーがバグってしまって、出るのが気体なのか液体なのか固体なのかの区別が難しい。肛門の外側にゴムが飛び出ていて、それがお尻に触れるので、出たあともそれがなんなのかわかりづらい。だんだん感覚を掴んできたけど、最初のほうは本当に毎回ひやひやしていた。

地元の駅に着いて、薬局でおむつを買う。何かに負けた気がするけれど、街中で下着やズボンを汚してしまうよりはこのほうがいい、と自分に言い聞かせる。

 

いったん家に帰ってゆっくりして、15時から吉祥寺で用事一件。おいおい詳しく書くけれど、最近はインターネットに限界を感じることが多くて、コロナ禍だけどリアルな場にもっと身をおかないといけないと思っている。ネットにはなんでもあると思われているけど、それこそシートン法の手術体験記みたいに情報は偏っているし、属性や居場所を超えて誰とでもつながれるというのも、半分は本当で半分はそうではないし。今日はその状況を変えるための準備のようなことをした。吉祥寺は賑わっていて色々ぶらつきたくなったけど、肛門のセンサーがバグっている恐怖があるため直帰した。

 

家に帰って読書。北村紗衣『批評の教室』を読み終え、ジェニー・ザン『サワー・ハート』を読み始める。夕飯は家で作ろうと思って材料を買ってきていたのだけどめんどくさくなってしまい、恋人といつもの焼き鳥屋へ行く。この店はお酒も提供していて20時以降も営業しているのだけど、術後2週間はアルコール禁止なのでウーロン茶を飲む。私のリアルな場に身を置くプロジェクトについて話したり。

 

帰ってきてから入浴。術後の過ごし方を書いた紙でも「毎日入浴」のところはわざわざマーカーで線が引かれていて、シャワーではなく湯船に浸かる方がいいらしい。温めて血行をよくする方が治りが早く、痛みも緩和されるそう。お風呂に入るのは怖かったが、意外と浸かっても痛みはない。トイレをするたびゴムに便がついてしまい、ウォシュレットやペーパーでしっかり洗っていてもいまいち不安が残っていたから、シャワーと湯船でしっかり洗えた気がして満足。正直、毎日は無理だと思うけど積極的に入浴していきたい。

 

今日の新規陽性者数は382人、現在の重症者数は131人、死者8人。かなり陽性者、重症者数が減ってきた。30日には緊急事態宣言、蔓延防止措置ともに一斉解除になりそう。ずいぶん思い切りがいいなというか、そこはもうちょっと都道府県ごとの状況があるのではと思うけど、まあわからない。これでまたすぐに数字が増えるようだとしんどいなあと思うけど、ワクチンの接種も進んでいるから状況は違うのだろうか。そして自分としても、10月以降は多少人と会う機会が増えていくかもしれないと感じている。

 

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この日記を書く数時間前(9月26日午前9時ごろ)、トイレをしていたらシートン法のゴムが取れた。「早くて1週間」と先生は言っていたが、まだ1日半しか経っていない。ゴムは輪っかの状態のままだし(稀にゴムが内部で切れてしまうことがあって、そうなるときちんと治療ができていない可能性が高い。輪っかのまま取れたということは、正常にゴムが役目を終えたということ)、ひどい出血などもないけど、さすがに早すぎるのでは……。不安になって先生に電話する。出られなかったので留守電にメッセージを残すと、すぐに折り返しがきて「早い人は本当に早いので、心配しなくていいですよ。それだけ浅い位置だったということでしょう」と穏やかに言われる。安心したけど、展開が早すぎて戸惑う。まあでも、本当に思った以上に負担が少なく、早く快復しそうでほっとした。