ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

たゆたう[2021年8月28日(土)晴れ]

なんとなく気乗りしなかった仕事に、今なら取り掛かれるという瞬間が時々ある。今朝はそういう気分だったので、ベッドから出てすぐ先送りにしていた文字起こしに着手。壊れやすいものを運ぶような、胸の中で水平を保つような気持ちでデスクへ向かう。この時、意識しすぎるとやる気が消えてしまうこともあるので、細心の注意を払いつつ、どこか無視するような感じもある気がする。2時間ほど集中して作業して、無事に完了。

 

恋人が起きてきて、私もシャワーを浴びて身支度をする。今日は奥多摩までドライブに行く日。7月の4連休の時、人と接触しないレジャーとしてドライブを検討していたのだけど、レンタカーに空きがなくて頓挫していた。その時に恋人がカーシェアリングサービスにいろいろ登録していて、それを使ってみる、ということになっていた。今どこかに遊びに行くのははばかられたけれど、車なら移動中も人と接しないし、現地で特に誰かと接したりしなければ大丈夫だろうと判断。

何を着ていこうか考えていて、今年まったく着ていない夏服がたくさんあることに気づく。この夏は週末にちょっと友人と会うようなこともしていないから、取材など用の落ち着いたシャツか、在宅用の適当なTシャツかしか着ていなかった。家ではパタゴニアのバギーショーツばかり履いていて、それ以外の短パンを履きたいと思って、そうする。上は色々と迷って、結局今年何度か着ている水色のチェックのシャツ。

 

利用したのはAnycaという個人間カーシェアリングサービスで、車はオーナー(個人の車の所有者)のお宅の駐車場にあった。一般的な一軒家の駐車場スペースに停車していて、ここから車を利用するのは不思議な感じ。基本的にはオーナーの方と対面せずに借りられるようなのだけど、たまたま出かける時間と重なり、利用の方法や、家の前の道が狭いので帰ってくる時は道の途中からバックで入れたほうがよい、などのアドバイスをもらう。

予想していたよりも車体が大きく、恋人は最初運転に戸惑い、私も地図の設定やBluetoothの接続がうまくいかない。わたわたしつつ、とりあえず方南町のあたりでコンビニに寄って、アイスコーヒーを買って出発。天気がいい。折坂悠太を流す。中央道に乗るあたりで一度「ハライチのターン!」のタイムフリーにして、オープニングでかかった(((さらうんど)))がよかったのでそのままApple Musicで流していたら、恋人に「折坂悠太にして」と言われたのでまたかける。この頃には景色が変わってきていて、最初にかけた時よりもよく合っていた。

 

山間の道を抜け、トンネルの多い地帯を過ぎ、気づくともう奥多摩湖のあたりを走っていた。湖のふちに沿って道路が蛇行していて、恋人が「これ落ちたらやばいよね」と言う。湖面は穏やかで、波ともいえない薄い模様のような波が太陽の光を砕いている。そこに車が落ちて大きな飛沫が上がるのを想像して、縁起でもないなと振り切る。車は何事もなく目的地に到着した。

 

展望台そばの駐車場に車を停めて、あたりを少し散策する。山の風景に心が洗われる感覚を覚えながら、私は自然の何に反応しているんだろうと思う。巨大な山にたくさんの木があり、その木にまた無数の枝があり、そして葉がある、そういう視覚的な細かさのようなものに注目している感じがある。湖の場合は、まず圧倒的な量の水があって、それを漠然と見ていてもいいし、光の反射や薄い波に注目しても癒される。ということは、巨大さと細かさを行き来できるのがいいんだろうか。

 

湖はラムネ瓶を重ねたような、浅さと深さが同居したような色合い。遠くには島のように浮かんだ山が連なって、それが湖の果てになっている。ここから見ている限り、その山には地肌が露出したところがなく、水面ギリギリまで木が繁茂していて、人のための場所ではないという印象。奥多摩湖自体は貯水池として人工的に作られたものなので、大きくとらえれば人のために作られた場所だと思うのだけど、生い茂る木々にとってそれは関係ない、というような感じがなんとなくある。手前のほうの浮きには数十羽の水鳥が同じ方向を向いて留まっていて、時々湖に飛び込んでは水紋を広げていた。

それから、恋人の希望で留浦の浮橋へ。「湖に浮かんでいる橋」と言われてあまりイメージできなかったのだけど、行ってみるとすごくきれいだった。橋の真ん中でぐるっと見渡すと、湖に浮かんでいるような感じ。渡りながら写真をたくさん撮る。

 

滞在時間は数時間だったけど、それでも満足して、そして暗くなるまでに帰りたかったので再び都心へ車を走らせる(恋人が)。車があって、運転できるようになったらと想像する。免許は持っているのだけど、私はアクセルとブレーキを本当に踏み間違える人間で、運転に対する凄まじい苦手意識がある。練習すればできるだろうか。でも少なくとも今のライフスタイルではいらないよなあ、とか、色々と考えが行ったり来たり。その中で映画『ドライブ・マイ・カー』を見たいという気持ちも湧く。車のシーンがとても格好良く描かれているという話を聞くので。しかし今の状況だと、なかなか映画館にも行きづらい(映画館そのものというより、なるべく新宿とか渋谷みたいな場所に行くのを避けたい)。

ドライブの方が、都心へ出かけるよりもよほど接触機会を減らせるなと思う。移動中が基本的に「個」の空間になるのは想定していたけれど、実際にやってみると思った以上だった。人の少ない地域はそもそも感染者が少ないので、自分がウイルスを持ち込んでしまうことに対して神経質になるけれど、車だとそのストレスがかなり低減される。出かけた先で複数人で食事をしたり、つい解放的になってマスクをしなかったりするのはリスクがあると思うけど、そうした対策を徹底していれば、ドライブで足を伸ばして違う景色の中でゆっくりする、というのはアリだと思った。みんなが同じようにできるわけじゃないと思うけど、息抜きの一つのケースとして。

 

車の中でニュースサイトやSNSを見て、少しずつ日常に戻っていく。気になるのは、渋谷の若者向けワクチン接種のグダグダさ。ジャーナリストの江川紹子さんがTwitterで「現状認識を誤ると適切な対応はできない。他の課題での現状認識は、果たして大丈夫なのだろうか…」とつぶやいていて、本当にそうですね……という気持ちになる。

途中、少し早いし東京都心をドライブしようかと話していたけど、恋人がけっこう疲れていたのでまっすぐ帰ることに。高井戸ICで降りて、そのまま家に向かう。高井戸ICまでは中央道で、その先が首都高だということを調べて知った。高井戸ICの出口が渋滞していたのは、パラリンピック期間中の特別料金を避けたい人が多かったからか。

 

今日の新規陽性者数は3581人、現在の重症者数は297人、死者19人。