ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

梅雨明けして[2021年7月17日(土)晴れ]

午前中から肛門科の病院へ。最初に聞いていた通り、やはり根治のためには手術が必要と言われる。手術の方法は自分で調べて知っていたけれど、一応先生にも聞いてみたところ、「あなたの場合はSeton法がいいでしょうね」とのこと。

どういう手術かというと、まず私の直腸はトの字のように途中で分岐して、斜めの棒の先に膿が溜まってしまっていた。これに外側から穴を開けて膿を排出したのが2カ月前の手術で、今はこの穴は膿を出し切り、自然治癒力によって塞がっている。根治手術ではここにもう一度穴を開けて、縦棒と斜め棒の間の道にゴムを通す。ゴムが縮む力を利用してゆっくりと患部を切っていき、同時に人体本来の回復力を利用して少しずつ傷を塞いでいく。トの字の縦棒と斜めの棒の間の角度が、ゴムの力でゆっくり狭まっていくイメージだ。そうして角度がゼロ度になったら治療完了となる。

「最終的には、ゴムがぽんと直腸から落ちてきます」

先生にそう言われ、なんかピタゴラスイッチみたいと思う。落ちたゴムに「ピタゴラスイッチ」の旗がついているのを想像してしまう。

ネットで調べた限りでは入院が必要と書いてあるものが多かったのだけど、聞いたところ日帰りでできるという。入院せずにすみ、かつ痛みのケアにすごく気を使ってくれるこの先生が施術をしてくれるのなら安心……と思いつつも、手術に対して躊躇してしまう。1カ月以上かけてようやく穴が塞がったのに、もう一度穴を開けるというのはけっこう心的な負担が大きい。その様子を察して先生も「まあ、再発を繰り返すようなら根治手術をするというのでもいいですけどね」と助け船を出してくれるが、仮に再発した場合はもう一回膿を出す手術をして、それからでないと根治手術はできない。どう考えてもやるなら今なのだが、日和って黙り込んでしまい、先生に「まあ、今すぐ決めなくても1カ月後の経過観察の時でも良いので……」と言わせてしまった。内心(面目ない……)と思いながら、処置室を後にする。

 

会計を済ませ、歩きたい気分だったので代々木八幡まで歩く。恋人に「手術はしたほうがいいけど入院は必要ないって」と報告。LINEでやりとりをしながら、どう考えても手術すべきだよなあという気持ちが強くなってくる。人体ピタゴラスイッチみたいなのもウケるし。さっきまでの逡巡はどこへやらでさっさと手術したい気分になっているが、忙しそうだったし今から電話して手術の予約を入れるのも申し訳なく、私はこういう判断の遅さがあるんだよな、と思う。過去、同様に判断が遅くて気まずかったり間に合わなかったりしたことを色々思い出して、少し憂うつに。

まだ午前中なのにとにかく暑く、歩いているだけで汗が噴き出してくる。胸のあたりにできた汗疹が痒い。東京、というか関東地方は昨日梅雨明けして、そのまますぐ猛暑に突入という感じ。さすが「アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」ですね、と思いながら、信号待ちで冷房の効いたコンビニに避難。入ってすぐの場所でオリンピック公式グッズを大展開している。

 

新宿に移動して珈琲西武でモーニングセットを注文。メッセージの返信など。返信を終えてもまだモーニングが来ず、注文から30分以上経っている。念のためそろそろ忘れられていないか確認したほうがいいかな、と思ったところでちょうど運ばれてきた。冷房が強く効いていて、アイスコーヒーを飲むと寒い。店に入った時は冷たいのが飲みたかったのだけど、すっかり体が冷えてしまった。

 

12時半からK's cinemaで『片袖の魚』。日本初のトランスジェンダー女性当事者が主演を務めた映画で、イシヅカユウさんが主役の新谷ひかりを演じている。楽観的でも悲観的でもなく、優しさと毅然とした態度をもって作られたような作品。洋服、音楽、コミュニティのつながり、そうしたものにエンパワメントされてひかりが一歩を踏み出す姿がまぶしく、この物語と交わることではじめて自由に泳げる感情というのがあるのではないかと思う。

上映後のアフタートークは東海林毅監督とイシヅカユウさん。本作は主役を一般公募のオーディションで選んだこともあって、イシヅカさんがオーディションに参加した経緯や、作品制作のことなど。撮影直前にイシヅカさんが「このセリフは言えない」と変更を求めた話を、東海林監督が「もうちょっと早く言ってほしかったな」と笑いながら言っていて、イシヅカさんもそれを受けて笑いながら謝っていて、きっと良いチームで作られたのだろう、と想像したりした。

 

そのあとは紀伊國屋で何冊か本を買い、恋人と合流して食事をしたのち、東急ハンズで食器を見る。もう少し買い物をしていくという恋人と別れて一人で帰宅。

 

今日の新規陽性者数は1410人、現在の重症者数は59人、死者2人。連日1000人を大きく超えている。