ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

札幌0317[2021年3月17日(水)晴れ]

今週はEvernoteに個人的につけている日記の書き出しがすべて「起きれない……」。今日も6時半に一度目が覚めたけど、二度寝して起きたらもう9時過ぎ。春は毎年こうだ。今年もこの季節がやってきたかとおおらかに思う気持ちと、一日のスタートが出遅れた焦りが混ざり合う。どっちの色合いが濃いかはその日の予定によるけど、今日は午前中に原稿を一本書きたかったので焦りが強め。出かける用もないのでシャワーを浴びず、朝食も摂らずパソコンに向かう。

 

原稿を書いている途中、ふと見たTwitterで札幌の同性婚訴訟のことを知る。その時は「賠償請求を棄却」という短い速報だけが出ていて、調べると全体的にやや落胆ムードが優勢。ちょうど昨日は同性同士の不倫も不貞行為にあたるという判決が東京地裁であったので、もし敗訴なら矛盾していてかなりモヤモヤする。そう思いながらスクロールしていたらMARRIAGE FOR ALL JAPANのアカウントが「判決理由が重要です。続報を待ちましょう」とツイートしていて、先回りして腹を立ててしまったことに反省。気を取り直し、固唾をのんで見守る。

数分おきにタイムラインを見ていたら、ある時「法の下の平等を定めた憲法14条に違反と判断」という速報が目に飛び込んできた! 一つだけだと確信しきれないので、複数のメディアが情報を流すまで待つ。タイムラインを更新したらいくつかのメディアが同じ内容の速報を打っていて、それと同時に喜びの声があふれだした。みんな反応が早い。動向を気にしていたんだな、と思う。私もメディアの投稿をリツイートしたあと、短くツイート。いろんな人が次々にいいねをつけてくれて、背中を叩いて励まされたような温かい気持ちになった。たかがいいねでこんなに祝福しあえるのかと思って、私も目に付いたツイートを積極的にいいねした。

 

判決の動向を気にしていた恋人にLINEを送る。素晴らしい結果をこうやって文字にすると、言いようのない気持ちが湧き上がってきて泣きそうになる。でも、ただ純粋にうれしいのとは少し違っていた。あまり情緒的な表現は使いたくないのだけど、麻痺していたところに血が通いはじめた時の感覚が一番近い。痺れた腕に血液がどくどくと流れ込んで、その激しさによって「自分は欠損していた」と気付くような感じ。

気にしていないつもりだったけど、権利がないことに、思っていたよりずっと傷ついていたのかもしれない。そしてその傷つきを、自分は認めていいのかもしれない。

 

もしこのまますべてが無事に運んで、日本で同性婚ができるようになったとして、私が結婚をするかどうかはわからない。前にも書いたけれどうまく想像ができないし、婚姻制度そのものへの疑問もある。でも、今日が歴史的な日で、大きく前進したことに変わりはない。そのことは個人がどうするかというスタンスを一度脇に置いて、手放しで喜んでいいことだ。

そして社会を変えるために尽力した人たちがいることを忘れないようにする。勝手に変わっていくなんてことはなくて、一人一人の生き方や考え方が風向きを変えていく。最前線で切り開いてくれる方々に敬意を払いながら、自分もできることをしていきたい。

これからも他の裁判は続くし、道は長い。バックラッシュも起こるだろう。それでも負けないように、喜びの中でこそ強く胸に刻みたい。

 

ひとしきり喜んだあとは生活に戻る。午前中から書いていた原稿を終え、編集や他の原稿の調整。疲れてきたタイミングでスーパーへ。とてもよく晴れている。ちょうど「荻上チキ・Session」の時間だったのでradikoを起動したら、これから木村草太さんが今日の同性婚訴訟について解説をするところだった。

祝杯だ、と思って、缶ビールをかごに入れる。