ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

春とカレーの匂い/地震[2021年2月13日(土)晴れ]

昨日の夜は友人たちと久しぶりにリモート飲みをしていた。いつもはすぐに眠くなってしまうのだけど昨日はわりと大丈夫で、「#変わる男たち」のことや『花束みたいな恋をした』、それから友人たちがポッドキャストをはじめようとしていることなどを3時過ぎまで話す。終わってから少しすると今が繁忙期の恋人が帰ってきたので、布団に入りながらさっきのリモート飲み会の様子をさらっと説明して、そうしているうちに寝ていたのだった。

夜が遅かったのでリズムが乱れ、起きたのは10時ごろ。洗濯をしたり朝ごはんを食べたりして、午前中のうちに荻窪へ。久遠チョコレートというお店でバレンタインのチョコを買う。ここは先日仕事でSDGsについて調べている時に知ったブランドで、障害者雇用率が7割を超える。代表の夏目さんはもともと障害者が働いて自立できる場を作るためにパン工房を立ち上げたが、工程や温度管理の難しさからうまくいかず苦戦していた。そんな時、チョコレートであれば高級なものでない限りは溶かして固めるだけだし、チョコの種類や混ぜ込む食材を変えればバリエーションも豊富に生み出せて、単価がパンよりも高いから働く人の賃金を確保しやすい……といったことに気付いて事業転換したそう。

バレンタインの時期なので混雑しているかと思ったけどそんなことはなく、ゆったりと買い物できた。人気商品のテリーヌのギフトボックス(たくさんの種類の中から好きなものを6種選ぶと、箱に詰めてくれる)と、パッケージに一目惚れした「プレミアムテリーヌ アートBox オリジナルTEAセレクション」を手に取る。どちらかにしようか迷ったけど、二人で食べるしまあいいかと両方買った。

 

それから本屋のTitleへ。高野文子るきさん』のちくま文庫版などを購入。最近、みんなが話題にしているのに読めていない『違国日記』『A子さんの恋人』をまとめて読みたいと思っていて、でもここ数週間仕事が忙しくてその時間がとれない。そのことを悶々と考えながら棚を物色していたら一巻で完結する『るきさん』を見つけたので、いったんこれで気を紛らわすことにした。

駅前に戻る途中、信号を待っている時に春だなあと思う。あたたかいと聞いていたので、冬物のコートではなく薄着で出てきたけど、それでも歩いていると少し汗ばむ。ちょうどお昼時で、あたりの飲食店からは中華やらカレーやらの匂いが漂い、のどか。行列がついているお店をいくつか見かけて(何の店なのかはわかったりわからなかったりする)、いいなあと思う。通りを歩くだけでこんなに素晴らしい気持ちになれる。自粛がどうでもよくなってきてしまっている。

 

駅前のドトールで軽めの昼食と仕事。締め切りは守るが、締め切りが明確でない仕事が後回しになっていて、その遅れを取り戻したくて常に心のどこかが焦っている。しかし焦っているわりに頭が働かなかったり、休みたい気持ちがサボらせようとしてきたりして、思うように進まない。今日もドトールではやりたいことの半分くらいしかできず、途中からはネットサーフィンしていた。

このままでは永遠にネットサーフィンし続けてしまうので、あとは家でやろうと席を立つ。家でできないからカフェに来たのに、カフェでできないから家に戻る。滑稽なようだけど、気分を切り替えるのに大切なのは「場所」ではなくて「移動」のほうなのだ、ということを改めて感じた。

家では仕事の本を読み終え、いくつかの細かい作業をこなした。大きめの仕事に着手する気力がない。

 

夕飯は昨日の残り物を温めるだけなので気楽。久保みねヒャダこじらせナイトのフワちゃん出演回を見ながら食べた。

そのあと、恋人とバレンタインのチョコレートを交換。恋人が買ってきたのはL’AVANCE(ラヴァンス)という、この2月に立ち上がったばかりのブランド。素材として使う果物やスパイスは無農薬のものにこだわっていること、またカカオ豆栽培の児童労働に反対していてその過程で作られたものは一切使用しない、というところが選んだ基準だったという。カカオ豆のことは私が定期的にぼやいているのを知ってのことだろう。あと「すでに知られているブランドのものよりも、新しくて志がある人を応援したくて」みたいなことも言っていた。

一通りお互いのチョコレートの解説を終えたあと、なんだか照れてしまって「二人ともSDGs…意識高いね笑」と言ってしまう。恋人はテーブルに目を落として少しだけ笑って、「いやでも大事なことだよ」と茶化さずに言った。

 

チョコレートを数粒食べたあと箱にしまって、『るきさん』を読んで、眠いからちょっと早いけど寝支度をしよう、と思いながらトイレにいる時、部屋が揺れているのに気付いた。ゆっくりと、振れ幅の大きな揺れが長く続いている。慌ててリビングに戻ると恋人が高い位置に積んであるレンジとトースターを押さえていて、テレビが前後に揺れている。収まったらすぐにテレビをつけた。どこも速報のテロップを流したり、緊急的に番組を差し替えたりして情報を伝えている。震源地は福島だという。

いつもとは違うと思わせるような揺れ方、ニュースの緊張感、春が近づいている空気、いろいろなものが重なり合って、東日本大震災のことがフラッシュバックする。続報が入り、「津波の心配はない」とアナウンサーの方が話したのを聞いて、知らぬ間に体に入っていた力が抜けるのを感じた。

東京で、震度4でこれなのだから、福島や東北の方々の不安は計り知れないと思う。これが前震かもしれないという情報もあるし、なかなか緊張して眠れないかもしれないけれど、少しでも穏やかに過ごせるように、これ以上何も起こらないように、と思う。同時に、もしもに備えて風呂場に水を貯め、折りたたみ式の水タンクを満タンにし、ベッド脇に靴を用意し、大事な荷物をまとめておいた。

Twitterを見ていると早くも外国人への差別煽動デマを書き込む人が現れているようで、本当に最低だな、と思う。見つけたら逐一通報していく。