ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

今日は断水だった[2020年12月17日(木)晴れ]

排水管の取り替え工事のため、朝9時から断水がある。それまでにシャワーや歯磨きを済ませなければならないし、どうせならこれを口実に朝から行動したいので、最近にしては珍しく早めの7時に起きた。身支度を終えて、必要ないかなと思いつつ災害用に買っておいたLOGOSの折りたたみ式のタンクに水を貯めておく。

仕事をしていると恋人が起きてきて、9時ぎりぎりにシャワーを浴び歯を磨いている。「いきなり9時ぴったりには止まらないよ〜」とのこと。まあそうだとは思うが、私はこういう時は早めに行動しておきたい。性格の差が顕著に表れている。

 

タンクに水も汲んだし、別に電気が止まるわけでもないので家で仕事をしようかと思っていたが、気持ち的になんとなくそわそわしてしまう。先日週に2回もトイレが詰まったことが気がかりで、イレギュラーなことをしたくない気持ちが強い。結局、家を出て駅前の喫茶店で原稿を書くことに。朝食を食べていなかったのでモーニングセットを頼む。

これは編集部から来た企画で、私がたまに行くギャラリーのギャラリストの方への取材だった。たくさん話してくださったし、文字数が限られているのですべては盛り込めなかったが、流れを作りながら詰め込めていると書きながら思う。掲載は地方誌なので、東京に住んでいる知り合いなどが読む機会がなさそうなのが残念。それでも、この取材と原稿を書くことができたのは私にとってとてもうれしい機会だった。まだそもそも編集部に提出すらしていないので、「だった」と過去形にするのは適切ではないか。でも、そうなる予感がしている。

 

原稿をいったん書き終え、コーヒーも飲み終えたので場所を変える。喫茶店をはしごして仕事をするなんて久しぶりだ。コロナになってからはやっていなかったので、9ヶ月ぶりくらいだろうか。家ではない、ゆるやかな時間制限や人の目がある場所で書くことで集中できる側面はやっぱりあるなあと実感しつつ、昔はそういうことをあまりにも頻繁にやりすぎていたなあと思う。今は家でもしっかり集中できるようになった。
二軒目の喫茶店ではジャズっぽいアレンジの静かなクリスマスソングが流れていて、そういえばさっきの喫茶店でも、移動している間の商店街でもクリスマスソングが流れていたなと思う。出かける機会が減り、こうして街中から入ってくる情報が少なくなったことで、クリスマス感も年末感も今年は薄い。だけどどの喫茶店もそれなりに人は入っていたし、みんな家にこもってばかりいるわけではないようだったから、世間はそうでもないのかもしれない。

茶店を出て、人気のない公衆トイレで用をたす(喫茶店のトイレが並んでいたので)。街中にある公衆トイレはだいたいそうかもしれないけれど、このトイレもいつ行っても人がいなくて、不気味なような、落ち着くような気持ちになる。手洗い所に「感染症予防のため対策を徹底しましょう」という張り紙が貼られていて、忘れ去られているわけではないのだな、と思いながら、冷たい水で手を洗った。

 

スーパーで夕飯の材料を買って帰宅。帰ってきて、タンクの水で手を洗う。水道が止まるとこまめに手も洗うのも難しくなるんだなと思うと、コロナ×災害の大変さは想像以上だなあと思ったり。それからオンライン取材と、原稿の修正など。取材中に家のチャイムが鳴り、おそらく工事の係の人が断水が終わったことを知らせに来てくれたのだと思うが出られなかった。実際、取材後に洗面所に行ったら普通に水が出るようになっていた。

 

SNSを見て、今日の東京の感染者数が822人と知る。昨日からさらに増えている。そのあと編集者の人と電話をしていたら「まあ毎週木曜日が一番感染者数が多いからねえ」と言っていたので、電話を切ってから少し調べてみると本当にそうだった。感染者数は木曜日がもっとも多く、陽性率がもっとも高いのは水曜日。たとえば、今日17日は検査数10919人に対し感染者数822人で、陽性率は7.5パーセント。昨日16日は検査数が1838人で、感染者数は678人なので、陽性率は36.9パーセントとなっている。他の週もこの傾向はだいたい同じ。

これを見ていると、一日単位であれこれ言うより一週間くらいの単位で見ないといけないなあと思う。そして検査数との比較で見ないといけないと理解しているのだけど、毎回感染者数だけが先に飛び込んでくるので、どうしてもその数字に踊らされてしまう自分がいる……健忘症のようだ。でも、夕方には都知事の緊急会見もあるそうだし、世間的にも感染者数で安心したり慌てたりを繰り返しているように見える。

調べる中でLINEの「東京都-新型コロナ対策パーソナルサポート」を友達登録すると、速報で感染者数と検査数が送られてくると知り、さっそく登録した。これでもうちょっと引いた視点で判断できるようになるはず。

しかしまあ、ここまできたら数字が変動しようとも大局としては「なるべく出かけず、人との接触を断つ」以外にない気もする。

 

それから夕飯作り。今日はポトフと、鮭のクリーム煮。鮭は恋人のお母さんが送ってくれたもの。東京のスーパーで見かけるものよりも身の色が濃いように感じる。だいたいできたら岸本佐知子『死ぬまでに行きたい海』を読み進める。雑誌『MONKEY』での連載をまとめたもので、「YRP野比」駅についてのエッセイなど、時折読んだ記憶がある文章に出会う。YRP野比駅に降り立ったがあまりYRP感がなく、混乱してさまよいながらYRPの意味を空想していた岸本さんが「You R Powerless。オマエハ無力」に行き着くところで笑った。今日読んだ中だと「初台」も良かった。

 

途中で恋人から帰宅のLINE。駅に着いたら連絡してと返信し、連絡があったところでポトフにシャウエッセンを、クリーム煮のソースに下ごしらえをした鮭とほうれん草を加えて火を入れた。