ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

1年、5年、60年、120年[2020年10月29日(木)晴れ]

部屋に小さなクモがいるのだけど、だんだん行動範囲が広がっている気がする。作業机の上でも見るし、対角線上に置いている鏡の辺りでも見かける。なんとなくクモって自分の持ち場があるというか、半径数十センチ以内を活動範囲としているようなイメージがあったのだけど、この部屋全体を歩き回っているようだ。

今朝も作業机の目の前にある窓の、下枠の辺りを歩いていた。毎日見かけるのでだんだん愛着が湧いてきていて、仕事の合間に「ハエトリグモ 寿命」と検索してみる。だいたい1年、長くて3年は生きるそう。検索結果の2番目に出てきたYahoo!知恵袋で、「私の家にはハエトリグモが数匹住みついているのですが、可愛いのでできれば長生きさせてあげたいんです」と相談している人がいて笑った。私もまったく同じ気持ちでいる。

 

昨日はヤシガニについて調べていた。沖縄に生息する甲殻類で、陸上生活を営む節足動物では世界最大種。大学生の頃沖縄へ旅行に行った時、宿のそばの食堂に両手のひらを思い切り広げたよりも大きいヤシガニの剥製が飾られていて(体は鮮やかな水色で彩色されていて、縁起物の飾りのようになっていた)、こんなのが棲んでるのか、と驚いた記憶がある。iPhoneで調べて、ヤシガニの挟む力はかなり強力で、人の指くらいなら簡単にちぎってしまえると知った。そのあと、新月の夜に当時付き合っていた恋人と星を見に海辺へ行ったのだけど、道中で何か音がするたび、ヤシガニが出たんじゃないかと話して笑ったのを覚えている。ヤシガニは長いもので50年生きるそう。

 

クモがどこかへ行ったので仕事に戻る。早くも来年の仕事をしている。その中で2021年の60年前、120年前のことを調べる必要があって、色々と検索したり、資料を見たりしていた。

120年前は1901年。昭和天皇が生まれた年で、八幡製鉄所が操業を開始したり、与謝野晶子の『みだれ髪』が発刊されたりしている。60年前は1961年。ジョン・F・ケネディが大統領に就任して、人類がはじめて宇宙に行った年。日本は高度経済成長期まっただ中で、坂本九の「上を向いて歩こう」がリリースされている。なんかエポックメイキングなことが多くて、今と比べて悲しい気持ちになってしまった。「経済成長はすっかり当たり前のものとなり〜」とか書かれているし。

もちろん当時に比べたら人権意識とかすごく高まっているし、色んな面で安全になっているのだろうし、当時に生まれたかったとは思わない。今だって日々、少しずつではあるけれど良くなっているはずだ。でも、「人類がはじめて宇宙に!!」みたいな、そういうダイナミックな良いことってない。歴史に残るニュースと言えば、たいてい暗い話な気がする。

 

恋人が土日仕事なので、今日はお休みをとっていた。昼まで仕事をして、一緒にご飯を食べるために外に出る。頼むとちょっと驚くほどのスピードで料理が出てくるタイ料理屋へ行き、二人ともガイパッポン(鶏肉と卵のカレー炒めをご飯にのせたもの)を頼む。食べながら、「もうすぐ付き合って5年だし、日帰りでどっか行きたいね」という話をする。ドライブがしたい。私は運転はできないが、恋人は運転好きなので乗り気。小田原、牛久など、日帰りで行ける場所を色々と提案したけれど、決定には至らず。悩んだというよりは、二人とも今すぐ決めなくて良いと思っていたから、気づくと話がわき道に逸れていくのを繰り返しているうちに食べ終わってしまった。

 

家に帰ってまた仕事。途中、リビングでだらだらしている恋人との短い雑談タイムを2回ほど挟みつつ、18時ごろまで仕事をする。最近はけっこう仕事が忙しい。今日も20時から渋谷で取材があるので、これから出かけないといけない。本当は取材の前にご飯を食べたかったのだけど、昼に食べたガイパッポンがかなり多かったせいでまったくお腹が空いていない。これ、取材中に一番お腹が空いてしまうタイプでは。まあでも仕方がない。

19時に家を出て渋谷へ。少し早めに着いたので、取材場所近くの宮益坂をあてもなくうろつく。iPhoneを見ながら歩いていたら、いきなり濃厚な花の香りがして、驚いて顔を上げると百合に似たラッパ状の花がたくさん下向きに咲いていた。調べると「エンジェルストランペット」という花だそう。高いところから垂れ下がるように咲いているので、下にいると香りがシャワーのように降り注いでくるのだった。