ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

動き続ける[2020年9月23日(水)曇り時々雨]

プライベートで使っているGmailのアドレスは、はじめてつきあった恋人とGoogle Calendarでスケジュールを共有するために作ったものだった。そのアドレスには「2010年9月」を意味するフレーズが使われていて、それは私たちが付き合い始めた月日を示している。ちょうど10年前だ。10年前といえば私は18歳の大学生で、消費税は5パーセントが当たり前だと思っていて、民主党政権だったけど政治には無関心で(当時の18歳は選挙権も持っていなかった)、そして恋人にまつわるフレーズをメールアドレスに入れてしまうタイプの人間だった。

その彼とは結局半年ほどで別れてしまった。電話で別れ話をしたあと、彼の家に置いてあるものを受け取りがてら最後に食事をすることになって、その日にちが2011年3月11日だった。

地震の混乱で予定はキャンセル。お互いの安否確認や情報共有のためにその後もしばらく連絡を取り続けていて、そんな経緯もあってか別れたあとも友達のような関係になっていたのだけど、いつの間にか疎遠になった。そして彼との連絡は途絶え、Google Calendarの共有も解除したが、アドレスは使い続けている。彼の名前などを入れたりしていたら絶対に使えなかったと思うけど、ただ記号的に日付が入っているだけだから、アドレスを見ていちいち彼を思い出すこともない。でも、今日はドライヤーで髪を乾かしながら、なんとなくそのことを思い出していた。

 

朝ご飯はワンタンスープ。昨日作った豚ひき肉とモロヘイヤのワンタンの残りを、即席で作った中華風スープに入れる。食べながらiPadで再校ゲラを確認した。

水曜日だけど連休明けなので、一応出社。15時半から秋葉原で取材をして、思いのほか早く終わったので駅ビルをうろつく。先週末から良いバケットハットがないか探している。バケットハット、アウトドア/スポーツブランドのイメージがあったのだけど、今年はもうちょっとエレガントな雰囲気のものがトレンドの印象。クラウンと呼ばれる頭の入る部分が深く、ひさしが下向きですっきりとしたフォルムのもの。ありそうで意外と見つからない。

あと、このタイプのバケットハットは顔の上部を隠すので、マスクをすると顔がほとんど見えず怪しくなる……。しばらくはマスクなしで出かけるのは厳しいだろうし、コロナが終わる頃にはこの帽子の流行も終わっていそうだし。ほしいけど躊躇してしまう。

 

駅ビル内の「エチオピア」でチキンカリーを食べ、会社に戻る。定時ちょっと過ぎまで仕事をして帰宅。

帰り道、先日は立ち読みで済ませた『BRUTUS』の「必要な服だけを。」というファッション特集を購入。具体的な着こなしやトレンドの話というよりは、抽象的な洋服についての価値観の話。先日は観念的な話が多そうだと思ってスルーしたのだけど、なんとなく読んでおいたほうがよさそう、と思って手に取った。

いろいろな人にこれからの/普段のファッションについてや最近買ったものなどを聞いているのだけど、その言葉やチョイスにはずばりファッションの現場にいる人じゃないからこその哲学が滲む。コロナや自粛による影響や価値観の変化も語られ、切り口にされているけれど、それが主軸になっていないのも良い。その人が情熱を注ぐもの、つまり人生がまずあり、人生の周縁に日常があり、日常の中に洋服選びやコロナによる生活の変化がある……くらいの距離感。写真家やミュージシャンなど、13組の表現者が一つのブランドの洋服で全身決めた写真とインタビューからなる特集が、写真も文章もよかった。

あと、特集の内容とは違う見せ方の話だけど、冒頭の「服との付き合い方は変わりますか?」という特集で、インタビューの全文はQRコードで飛ばしてウェブ上で公開しているのが面白かった。技術的には難しくないはずなのに意外と見かけたことがなくて斬新。雑誌をたくさん読むわけじゃないから、もしかしたら私が知らないだけでやっているメディアも多いかもしれないけど……。

 

BRUTUSを読みつつ、MとZINEについてLINEでやりとり。今回の日記のZINEはいかんせんページ数が多いのでそれだけでコストがかさんでしまい、紙媒体としての面白い仕掛けとか、凝った印刷とかまでは手が回らなそう。ただ、今日なんとなく新しいZINEのテーマを思いついて、そっちでは色々できるかもしれない。

新しいテーマというのは、以前考えて着手しかけていたものとは別物。中途半端にあれこれ手をつけたみたいになっているのがうしろめたいけれど……まあモチベーションがちゃんと持てるものをやるほうが良いはず。新しいテーマは日記を読み返しながら感じたことがもとになっている。動いている時のほうが、新しいアイデアが色々と浮かんでくるものなんだなと実感している。