ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

不安の輪郭[2020年9月21日(月)曇り]

ここ数日窓を開けて眠るようになったのだけど、朝起きた時に花粉症の症状が出る。春の花粉症は高校生の頃からあるけれど、ついに秋花粉も来たかと憂うつ。実は昨年から症状が出ていた気がするのだけど、そこまでひどくなかったので「これは秋花粉ではない」と自分に言い聞かせていた。

目のかゆみと鼻水がどうしようもないので、春に処方されて残っていたフェキソフェナジンと小青竜湯を飲む。フェキソフェナジンは病院に行って薬をもらいたいが、今週は少し忙しくてなかなか行けなそう。とりあえず駅前へ行き、アレルビ(フェキソフェナジン=アレグラのジェネリック)を2週間分買った。ジェネリックとはいえ薬局で処方してもらうほうがずっと安いので、どこかでタイミングを見つけて行きたい。コロナのこともあって、病院に行くこと自体が少し不安ではあるけれど。でも、こういうのも医療機関で働いている人からしてみればあまり良い気はしない考えだろうか。

 

薬局の帰り、本屋でBRUTUSとPOPEYEのファッション特集を立ち読み。今日は恋人と久しぶりにデート。秋服を見たいと話していたので参考に手に取ったのだけど、BRUTUSは観念的な話が多く、POPEYEは丁寧だけどあまり心が躍らなかった。

一度家に帰って、少し仕事をしたあと二人で新宿におでかけ。恋人が最近買った秋服を着ようか迷っているので、「涼しかったけど、長袖はまだ暑いかも」とアドバイス。私は今年着るのは最後かな、と思いながら、紫の半袖シャツを着た。この時期、例年だったら夏服に飽き飽きしていて、少しくらい暑くても秋服を着たがったと思うのだけど、今年はむしろ夏服を着足りないまま夏が去ってしまった印象がある。

 

予約していた店でピザを食べる。変わったメニューが食べたく、ほうれん草チーズのソースにサラミがのったピザを頼む。恋人はきのこやベーコン、半熟玉子などがのったピザ。シェアして食べたのだけど恋人が私の頼んだピザの味を気に入ったらしく、「あなたが選ぶメニューって当たりのこと多いよね」と言われる。私もそう思う。ただ、王道ではなくて変化球を頼みがちなので、なんか邪道かなと思って落ち込むこととかもある。

 

それからNEWoMANとか、ユニクロとか色々。良いなと思うものはたくさんあったが、序盤にユニクロで買ったことで、買い物欲が満たされてしまった感がある。なんか、手軽なところで満足してしまって本当の快楽にたどり着けない自分の人間性を垣間見たような気がする……。自分の欲望に対して私はまだまだ臆病だ。その姿は一見、自分が欲望を手なずけているように映るかもしれなくて、そのイメージで自分を欺くことも可能だろうけど、そうではない。何かに自分が飼い慣らされているだけだ。分不相応な何かを選んで、だけどそれによって奮い立たされるようなことがしたいと、心のどこかで思っている。

地元に戻ってからも近所の古着屋を二人で物色。かなりたくさん出歩いた。最後に近所のOKストアで夕飯の材料を買って帰宅。

このOKストアは少し前まで一組につき一人しか入れないようにするなど、店内の混雑緩和のために色々と対策をしていたのだけど、今日は恋人と二人で入っても特に何も言われなかった。今日は色々なお店に行ったけど、入り口にあるアルコールスプレーもうっかり使い忘れてしまうことがあったし、やっぱりどんどん気が緩んできているなあと感じる。そして、気が緩んでいることに対して何も思わなくなってきているとも。関連のニュースも一時期に比べたら熱心に追わなくなったし、東京の感染者数の推移も把握していない。なんとなく、こういうぼんやりとした意識のまま生活していくことになるのだろうか。

 

……そんな風に思っていた矢先、かなり身近な知り合いから「先日コロナ陽性になった」と連絡があった。えええええ!?と思わず声が出てしまうほど驚いた。すでに回復しているとのことなので安心したけれど、油断していたところだったのでショックが大きい。

実はこれまで「知り合いの知り合い」とか、「友達の職場が入っているビルで」とかがもっとも近い感染例で、直接顔を知っている人が陽性になったのははじめてだったのだ。話を聞くと、40度近い高熱が出ていたりなかなかしんどそう。さらに具体的な症状以上に、外出禁止や仕事、学校、家族など周囲への影響が大きいらしく、むしろそれに翻弄されたと言っていた。うーむ。

聞いていると、陽性になったところで薬があるわけでもないし、よほど重症化しない限りは自宅療養で、具体的なケアは手薄っぽい。その一方で本人の外出禁止、濃厚接触者の外出自粛(まったく外出できないわけではないけど、学校や職場への出勤はPCR検査を受けて陰性と判断されるまでの数日間は控えるしかない。飲食店や小売業だと営業停止も?)、社会的スティグマなど、被るリスクばかりが大きい。

SNSを見ていると「PCR検査を受けたくても受けられない」人の話はよく見るのだけど、これだと「コロナかもな」と思いつつもあえて検査を受けない、という判断をする人も増えてきそう。

 

なんか世間的には大丈夫な空気になっているけれど、特に状況が改善されているわけではないのだ。体験者の話を色々と聞かせてもらって、私としても再び気を引き締めないとなと感じた。一方で、知り合いが感染したことで(そしてかなり大変な思いをしつつもすでに回復していることで)、どこかこのウイルスの輪郭を捉えられたようにも感じている。知り合いの体験談を聞いて追体験したことで、不安が際限なく広がるような怖がり方から、身体性(というある種の限界)をともなった警戒へ移行できる気がする、というか。それは心構えみたいなもので、実際の行動がどう変化するかはまだわからないのだけど……。