ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

心を開けば[2020年9月13日(日)曇り時々雨]

6時半ごろ起きて、ZINEのための日記の整理。今日までで収録予定の半分を整理できた。Mに原稿をGoogle Driveで送信する。残りの半分も来週の4連休には整理してしまいたいところ。

恋人がキッチンで皿を洗ったり、コンロまわりを磨いたりしてくれていたので、私は掃除機をかける。もう数週間ほどかけていなくて、床がかなりざらざらしていた。抜け毛も全部集めたら部分ウィッグくらいは作れるのではないかというほど落ちている。髪だけではなくてすねなどの体毛もあると思うけど、こんなに抜けるのか、といつも思う。

 

一通り部屋をきれいにしたら昼食。昨日作っておいたナスと厚揚げの煮物、それから大根のみそ汁、大根の漬物。漬物は大根が余ってしまったのを消費するために作ったのだけど、素朴な味がしてよかった。小さい頃、母がたまに短冊切りの大根を梅干しとかつお醤油であえたものを作ってくれることがあって、私と姉のYはおやつがわりによく食べていたな、と思い出した。ここに梅干しを加えたら近い味になるだろうなと、思い出しながら食べる。

 

それから恋人と一緒に新宿へ。MとN、Hの5人で『ブックスマート』を見た。主人公は優等生のエイミーと生徒会長のモリーという女子高生2人組。モリーは高校生活を勉強に捧げたことで、名門イェール大への進学が決まった。そのことを誇りに思っていたのだけど、卒業式直前、遊んでばかりだと思って下に見ていた同級生たちもハイレベルな進路を歩むと知ってショックを受ける。「このまま遊ばずに高校生活を終えるのは嫌!」と、二人は卒業パーティに繰り出す……という話。

モリーたちは序盤、クラスメイトからえぐい陰口を叩かれていたりと彼らから快く思われていない。でも、いざパーティ会場へ行くとクラスメイトたちは「君が来るなんて意外だね!」と言いながらも笑顔で受け入れてくれる。敵対心をぶつけてきたり、自分のことを下に見てきたりするキャラクターは現れない。ただ自分たちのパーティに来てくれたことを歓迎してくれる。

だからといって、それは「みんな君たちと仲良くなりたかったんだよ……!」みたいな暑苦しい話でもない。「あなたは本当は愛されていたんだよ」という話じゃなくて、「心を開けば世界は受け入れてくれる」という話なのだ。

それからモリーとエイミーは唯一無二の親友なのだけど、それが何かの犠牲の上に成り立っているわけではないのがいいなと思った。後半でエイミーには同級生の女の子との恋愛の可能性が示唆されるけど、それがモリーとの関係を壊すものにはならない。(男との)恋愛か(女同士の)友情か、という図式であれば使い古されているのだけど、エイミーがレズビアンなのでこの図式に登場するのは全員女性。私はそこに独特の緊張感を読み取ってしまったのだけど、それがトラブルに発展することもなく軽やかに進んでいく。アフリカへ留学するエイミーをモリーが見送るクライマックスも、同様の軽やかさで感傷を壊す。「青春の一ページ」みたいなセンチメンタリズムに回収されることなく、映画全体に漂う喜劇のムードのまま人生が、関係が続いていくことを予感させて映画が終わる。たくさん笑ったし、いい映画だった。友達と見れてよかった。

 

そのあとはいったんMと二人で1時間ほどZINEの打ち合わせ。制作スケジュールを確認し、文フリに出展する際の名前を考えた。今日のMは大忙しで、このあと3時間ほど別件で抜けて夜にまた合流するという。私はNとH、恋人と合流し、新宿三丁目の餃子茶房8で夕飯。Nは「この店がこんなに空いてるの見たことない」と驚いていた。街にはずいぶん人が戻ってきたように感じるけれど、飲食店はまだ戻りきっていないのだろうか。先月末に大学の後輩と新宿三丁目で沖縄料理を食べた時、店に入ってから出るまで客がほぼ私たちだけだったということもあった。

 

Mが戻ってきて、店を変えて23時ごろまで飲む。男5人で生絞りいちごサワーを頼み続けたり、H(映画に誘ってくれたのも彼だった)の『ブックスマート』評に膝を打ったり。

帰り道、半袖では少し肌寒いような空気の中を駅へと歩きながら、Mに「つるの剛士の発言とか、辞任した安倍さんへの批判の仕方を見ていて、最近はリベラルの価値観に疑問を感じつつある」というようなことをぽろっと言われる。時間がなくてあまり話せなかったのだけど、悪だと決まったものを闇雲に叩く人の言葉に疲れている、という意味かなと解釈した。ただそういう人は政治思想を問わずいると思うので、どこまでがOKなラインなのか考えてみたり、元気がないときはそもそも過激な言葉遣いの人の発言を見ないようにしたりしてやっていくしかないのかなと思う。

時間がなくて私の考えをMに言うことはできなかったから、「話せた」というほど話せはしなかったのだけど、問題意識を共有できてよかったなと思った。Mは大多数の意見を前に立ち止まったり、空気にのまれている自分にのまれながら気付いたりするところが私と似ているなと感じる。文フリではMはMで作品を作るそうなので、どんなものになるのか楽しみ。