ヌマ日記

想像力と実感/生活のほんの一部

良いタイミング[2020年6月5日(金)晴れ]

昨日も仕事で帰りが遅かった恋人と、一緒に寝坊をかます。予定よりも2時間近く寝てしまった。寝覚めも悪くていまいちすっきりしないが、ひとまずシャワーを浴びて、ちょっとだらだらして、そろそろやらないと……とパソコンに向かう。仕事をしはじめると少しずつ頭が働くようになってきた。

はじめてしまえばすぐなのにはじめるまでに時間がかかるというのは文章を書く人あるあるだと思うのだけど、漏れなく私にも当てはまる。それは他の何かの誘惑に負けているというよりは、避けている、という感覚が近い。読む人の期待を下回ってはいけないと思えば思うほど、大幅に足りていないものしか書けないような気がしてくる。それでつい回避行動に出てしまうのだ。でも、実際にやってみると思ったよりはできるし、手を尽くしたことで自分の中でキリをつけられる。泥沼にはまるよりもこっちのパターンのほうが多いのだし、さっさとやればいいのだ。わかってはいるんだけど。

 

14時ごろまで仕事し、それからオートミールにキムチを入れたものを食べる。最近ひとりでいる日の昼食は高確率でオートミール。米を炊いたりパスタを茹でたりするより手軽だし、パンよりも食べた気になれる。最初は少なく感じられたが、次第にそれも慣れてきた。

 

食べてからまた少し仕事をしたら、出かける準備をして下北沢へ。こうして都心を出歩くのはかなり久しぶり。みんなマスクをしているけど、それ以外はいつも通りに戻ったように思える。

駅から歩いて、4月にできたばかりの「BONUS TRACK」へ。ここに新しくできた「日記屋 月日」という、日記専門の本屋へ行くのが今日の目的。お店がオープンする前からすごく楽しみにしていたのだが、コロナの影響で休業していて、今週から営業を再開したのだった。

「日記屋 月日」の店内はこぢんまりとしていて日中でも少し薄暗く、建物は新しいのだけどずっとそこにあったように感じられた。置かれているのは本当に日記ばかり。この一冊一冊が生活の記録なのかと思うと、やけに本棚が大きなものに感じられた。じっくりと見て、気になっていた滝口悠生『やがて忘れる経過の途中(アイオワ日記)』と伊藤佑弥・僕のマリ『2人の2月』を購入。

そのあとはBONUS TRACKを少しうろつく。まだ営業が予約制だったり、テイクアウトのみという飲食店も多かったけど、すばらしく雰囲気が良い。なんかありきたりな言い方かもしれないのだけど、働いてお金を得ることと生きることを重ねようとしてきた人たちが少なくない数集まって、縁や運がばっちりはまったことで実現した夢、のような空間だと感じた。売り上げや規模を拡大していくというよりは、すでに完成されたかたちがあって(もちろん柔軟に試行錯誤はされていくと思うのだけど)、それを豊かに持続していくことが挑戦である、というような。プロデューサーの内沼晋太郎さんと小野裕之さんのインタビューでは、小野さんが「商業施設というよりは、職住遊が渾然一体となった商店街であり、小さな複合型施設であり、という感じで。立地的にもちょうど下北沢駅世田谷代田駅の中間にあって、どちらも歩いて5分ぐらいなので、下北沢の商業感と代田の住宅感を合わせ持つような。」と発言しているけど、まさにそんな雰囲気。初夏の金曜の午後という時間もあいまって、まだ新しくぴかぴかの建物たちがさらに輝いて見えた。

天気がいいしやっぱり街を歩くのは楽しいので気分も開放的になってきて、三密とかソーシャル・ディスタンスとか、だんだんなあなあになってくる。一方でやっぱりどこか緊張もしていて、エスカレーターでもなるべく手すりに触らないようにしていたし、これまでと同じようにふらっと店に入るのははばかられるような気もした。下北沢の無印良品は入店制限と思われる数人の行列ができていて、遠目に見ながらこれが日常になっていくのかなあと思う。

 

夜は友人と会う約束をしていた。下北に行くことを決めていたので近所に住んでいる彼を誘ったのだけど、今日は自宅ではなく会社で仕事をしているとのこと。彼の会社の最寄駅へ向かい、近くのバルで生ビール。久しぶりに飲む生ビール、うまい!

友人と会うのも久しぶり。彼と、というより、友達と会うこと自体がロックダウンが噂されていた3月末以来のことだ。やっぱりオフラインで話す方が会話に遅延がなくて、一体感のようなものがある。オンラインだと一つのボールを投げ合っている感じだけど、対面だと表情とか、言い淀んだこととか、そういう小さなさまざまなものを拾いあっているんだなあと実感。お互いの近況報告から、「なんだか最近いろんなニュースがあって、一つのことを考え切らないまま話題がうつっちゃってる感じがするよね」みたいな話まで。昨日4日には、同性パートナーを殺害された男性が遺族給付金を不支給とされたことの取り消しを求める訴訟で、請求が棄却されたというニュースを見た。その場ではこの話はそこまで深くしなかったのだけど、今あらためて考えると本当に差別的な判決だ。仮に私が何らかの事件に巻き込まれて殺された時、「男同士だから遺族給付金は受け取れないよ、男女だったらよかったんだけどね」と言われる、みたいなことだから。そんな不安の中で暮らしたくない。

 

2杯目にコロナビールを頼んだあたりで別の友人カップルから連絡。私たちが2人で飲むという話をしたら、「まだお店は警戒しているんだけど、屋外だったら行きたい!」と言ってくれていたのだ。もうすぐ着くというので、コロナビールを飲み干して店を出る。コンビニでお酒などを買い、代々木公園の入り口で合流。

真っ暗な公園の芝生にシートを広げて座る。ひとりがタンドラム(ハンドパン)という楽器を持ってきていたので、会話しながらみんなで代わる代わる叩く。澄んだ音が響く。草の匂いがして、見上げると満月が出ている。なんか居酒屋よりずっと良いかも。

22時過ぎには仕事を終えた恋人や、近所に住んでいるまた別の友人も合流して、最終的には6人に。私は焼酎の200mlボトルをペットボトルの烏龍茶に注ぎながら飲んでいて、いつのまにかけっこう酔ってた。あっという間に終電の時間で、原宿駅まで急ぐ。この時間でもけっこう若者のグループがたくさんいて、彼らはこのままここで夜を明かすんだろうか。

明日は雨が降るそうだし、もう少し季節が進めば夜でも暑いだろう。良いタイミングで会えてうれしかった。